不安について

不安は未来に対しての感情です。恐怖と似ていますが、恐怖は身の危険や命の危険を感じたときに生じる感情で、今現在の状況に対して起こります。不安は「災害や事故が起こるかもしれない」「仕事で失敗するかもしれない」「あこがれの人に嫌われるかもしれない」など、これから起こるかもしれない出来事を悪い方に想像することで、人は不安を感じます。

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人はなぜ不安という感情をもっているのか

進化心理学では、不安は自己防衛であるとされています。自分にとってよくない出来事を想像することでそれを回避したり、最悪のケースを想定することでショックを和らげるという効果もあるようです。

ただし、人が不安を感じると免疫力が低下することがわかっています。これは長期間不安を感じ続けると病気のリスクを増大させるということです。自己防衛であるはずの機能が人間を蝕む(むしばむ)のです。

したがって、人間にとって長期的な不安は不必要だと考えられます。当たり前のことのように聞こえますが、不安で苦しんでいる人が「今感じているこの不安は、必要がないものだ」と思うだけでも、不安は軽減されます。

不安を感じることによるリスクは病気だけではありません。不安は人の集中力も奪ってしまうのです。仕事の効率が落ちるだけでなく、取り返しのつかない失敗をする恐れもあります。

免疫力や集中力の低下を考えると、不安のもともとの機能はまったく逆なのかもしれません。免疫力や集中力が低下するから不安になるというのが本来の機能なのではないでしょうか。「この状態が続くと病気になってしまう」という身体からのメッセージであるということです。

楽しいから笑う、笑うから楽しい。心と身体のどちらに変化が起きても、もう一方に影響をあたえるという人間の構造を考えると正しいように思います。どちらにしても、不安に気づいた時点で何らかの対策を取る必要があります。

ノーベル生理学・医学賞を受賞しており、「人間 この未知なるもの」の著者でもあるアレクシス・カレルは次のように述べています。

「不安と闘う術を知らないビジネスマンは、若くして死ぬことになる」(D・カーネギー 田内志文(訳)「新訳 道は開ける」角川文庫)

これはビジネスマンに限ったことではなく、すべての人に共通するものだと思います。我々は不安に対する教育を受けていませんので、その術は自分で学ぶしかないのです。

不安を解決するには、まず問題を明確化する

不安の解決には、不安に思っている原因を知ることから始めます。原因がわかるだけで解決されることもあるのです。

科学者であり発明家でもあるチャールズ・ケタリングは次のように述べています。

「問題をきちんと明確化すれば、半分は解けているようなものだ」

不安で苦しんでいる人の中には、なにに不安を感じているのかわからず、それが不安のタネになっていることがあります。また、頭では原因がわかっているつもりでも「なぜ不安を感じているのか」と自分に問いかけ、論理的に答えを出すことで不安は軽減されたり「不安に思うほどのものではなかった」と、解消されるケースもあります。

不安には、自分の意志で問題を解決できるものと、できないものの2種類があります。

解決できる問題の対処法

問題の解決には、以下の5つのステップを実行します。

  1. 事実を把握し、なにが問題なのかを明確化する。
  2. 事実を解析し、問題の原因を探る。
  3. 問題の解決にどのようなもの・手順が必要なのかリストアップする。
  4. どの手順が最適なのかを選択する。
  5. 選択した手順を実行する。

自分の意志ではどうにもできない不安の対処法

世の中には自分の意志だけではどうにもできないことがたくさんあります。収入、老後、人間関係、病気など、これらで悩んでいるのは我々現代人だけではなく、昔の人も同じように悩んでいたはずです。先人たちはどのように不安を解決してきたのでしょうか。

未来ではなく今日を生きる

「どんなに悔いても過去は変わらない。どれほど心配したところで未来もどうなるものでもない。今、現在に最善を尽くすことである」(松下幸之助)

このページの頭にも書いた通り、不安は未来に対しての感情です。どれだけ過去を悔いても、どれだけ未来に不安を抱いても行動しなければ未来は変わりません。それなら不安に費やしている時間を、今やるべきことに費やすべきです。冷静になって考えれば誰もが理解できることですが、不安を感じているときは、なかなか意識していないのではないでしょうか。

未来への不安によって、自分のやりたいことができずにいる人はたくさんいると思います。私もそのひとりでしたが、ある言葉によって自分のやりたいことができるようになりました。

「鉄の扉で過去と未来を閉ざし、今日というひと区切りを生きる」(D・カーネギー 田内志文(訳)「新訳 道は開ける」角川文庫)

遠くの方に見える未来はいつもぼんやりとしています。ぼんやりとしているから人は不安になるのです。それなら一層のこと、未来を見えなくしてしまえばよいのだと気づきました。

私は、昨日と今日を鉄の壁で閉ざすイメージをして、過去と未来のことは考えず仕事に集中しました。すると、今までやりたいと思っていたのにできなかったことに自然と手が伸びるようになり、毎日が充実するようになりました。できなかったのではなく、やらなかっただけだったのです。

明日のことは誰にもわかりません。わからないことに時間を費やすのではなく、今日という日を一所懸命に生きてみましょう。

時間を忘れて何かに没頭する

人間は同時に2つ以上のことを考えることはできません。何かに没頭することで、不安に思う隙を埋めてしまうのです。

没頭するのは趣味でも良いのですが、やはり仕事が最も適していると思います。仕事は「いつまでに終わらせなければいけない」という期限がはっきりしているので集中しやすく「誰かの役に立っている」という満足感や充実感を味わうことができます。

精神病の治療やリハビリテーションとして作業療法というものがあり、この方法はそれと類似しています。作業療法は歴史をたどると、決して新しいものではなく紀元前から行われているものです。現在とは考え方やその形は異なると思われますが、2000年以上の歴史がある方法です。

心配ごとのほとんどは起こらない

心配で夜も眠れなかったのに、時が経つにつれ不安は消えていったり、心配していたことが起こらなくて心配して損をした、ということは誰にでもあると思います。

人はリスクに対して過剰に反応する傾向があります。不安に思っていることが現実に起こる確率が0.01%に満たないにもかかわらずです。心配ごとのほとんどは起こらないのです。

もし、不安に思うことがあれば、上記で示した「解決できる問題の対処法」の5つのステップを実行し、今できることをすべて行ったらあとは忘れましょう。起こらない出来事に悩んでもその悩みは解決しないのですから。

人のためになることをする

精神科医でアドラー心理学の創始者でもあるアルフレッド・アドラーは次のように述べています。

「自分がどうしたら人を喜ばせることができるのか。これを毎日考えるようにすれば、二週間で憂鬱症から回復する」(D・カーネギー 田内志文(訳)「新訳 道は開ける」角川文庫)

誰かを喜ばせることを考えるのはワクワクしますし、それを考えている間は不安を感じる隙はありません。ワクワクすることを考えれば、それを実現したくなり行動します。こうして心身の健康状態を取り戻せるのです。

ビジネスの世界では、サービス精神が旺盛な人が成功する傾向があります。ビジネスだけではなくすべての人間関係に言えることかもしれません。人に喜ばれる行為自体が人に好かれる要素でもありますが、それ以上に健康な身体を維持できることが大きいのだと思います。

人は報酬の有無にかかわらずその行為自体が目的の場合、満足感や達成感を感じ、それが持続することがわかっています。これはストレスを軽減するだけでなく、ものごとを前向きに考えられるようになり病気のリスクも少なくなります。前向きな人は、周りの人に好かれやすいので成功しやすいのです。

資産家がボランティア活動をするケースはたくさんあります。普段はビジネスで利益を得ることを考えなければいけないので、利益という報酬を考えないボランティア活動を行うことで、精神的な健康状態のバランスをとっているのではないでしょうか。

祈る

祈りを捧げる宗教はたくさんあります。おそらく人類が生まれてから現在までなくなっていない行為のひとつが祈りです。様々な分野で言えることですが、数百年、数千年と受け継がれているものごとは、何かが優れているからなくならないのです。

祈りが神に届くのかどうかは証明することができませんが、祈りの心理的効果は心理学や脳科学からいくつか提示されています。ここでは3つほど紹介したいと思います。

1つ目は、自分が抱えている問題や悩みを具体的に言語化できるということです。祈りを捧げるということは祈る内容を考えなければならないので、自分が何に悩んでいるのかが具体的になるのです。先にも記述しましたが、問題が明確化されるだけで解決することもありますし、問題がわかれば解決するために行動することができます。

2つ目は、ポジティブな祈りは脳内で快楽物質が分泌されるということです。快楽物質が分泌されると充実感や幸福感が得られ、身体の免疫力が向上するとともに、気持ちも前向きになるので活動的になります。

3つ目は、自分一人で悩みを抱えているわけではないと感じられるということです。悩みを誰かに聞いてもらうことで悩みを共有していると感じるので、不安が和らぐのです。これは自分の思いを自分の外側に向けて語っていることが良いのだとされています。つまり人間でなくても良いのです。よく動物や植物、ぬいぐるみなどに話しかける人がいますが、バカにできない行為だとわかります。

間違えるのは当たり前

世の中には、あらゆるものごとに対して完璧もとめてヘトヘトになってしまう人がいます。それを楽しいと感じているうちは問題ないのですが、いわゆる完璧主義と呼ばれる人は一度歯車が狂いだすと立ち直るのが難しいとされています。

完璧主義とはいかなくても、自分の失敗が周りからどう見られるかを気にする人はたくさんいますし、それが不安の種になることもあります。

結論から言えば、あなたの失敗は誰も気にしていません。1ヶ月もすれば、あなたが失敗したことさえ覚えていないのです。

人間の脳はコンピュータと比較するとバグだらけであることがわかっています。間違えるのは当たり前なのです。成功することのほうが奇跡とも言えます。

「一度も失敗をしたことがない人は、何も新しいことに挑戦したことがない人である」(アルバート・アインシュタイン)英語の名言・格言 - clairworks

失敗は悪いことではなく、挑戦した結果であり、前進している証拠でもあるとアインシュタインは言っています。

「わたしは今までに一度も失敗をしたことがない。電球が光らないという発見を、今まで二万回したのだ」(トーマス・エジソン)トーマス・エジソン 名言

失敗かどうかは、現象をどう認識するかによっても異なります。エジソンは失敗から何かを学ぶことによって、それは失敗ではなく成功であるとさえ言っています。

極論を言えば、失敗しない唯一の方法は何もしないことです。しかし、これを正しい選択だと考えている人はいないと思います。

偉人たちの言葉を言い換えれば「本当の失敗は何もしないこと」なのです。

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