印象形成モデル

古典的な印象形成モデルでは、他者を特性という概念から把握することを前提としていたが、近年では年齢や性別、国籍などの社会的カテゴリーに注目し、様々な場合を想定した包括的なモデル化が行われている。


古典的モデル

アッシュの理論

アッシュは、いくつかの特性リストを読み聞かせた後、そこから思い浮かぶ人物像を記述してもらい、印象を評定してもらう実験を行っている。その中で「温かい」「冷たい」などのように印象形成に大きく影響している中心的特性と、あまり影響しない周辺的特性が存在することを発見した。

また、「温かい」などの中心的特性を提示しなくても、周辺的特性からその特性が推測されれば、中心的特性を提示したときと同様の印象が形成されることや、同じ特性でも提示する順序を変えるだけで、異なる印象を形成することを明らかにしている。

これらの結果から、全体の印象は個々の特性の単なる合計ではなく、それらを統合する全体によって、個々の特性の意味合いが想定されることを示した。

情報統合理論

情報統合理論とは、特定の次元での個々の特性の尺度値から、代数的結合によって印象形成を予測しようとするものである。

簡単に説明すると、特性の尺度値を設定し、そこから四則演算によって全体的評価の値を求める方法で、下記のようなモデルが存在する。

二重処理モデル

ブルーワーによる二重処理モデルでは、個人依存型処理とカテゴリー依存型処理の2つの過程を想定している。まず性別や年齢などの次元でカテゴリー属性が同定され、相手が現在の自分に関連性があるかどうか自動処理が行われる。その際に関連性が認められれば個人依存型処理、認められなければカテゴリー依存型処理が行われる。

カテゴリー依存型処理では、その人物を位置づける社会的カテゴリーとの照合が行われる。照合は抽象度の高いカテゴリーから行われ、その人物とカテゴリーの特徴が一致すればそのカテゴリーに位置づけられ、一致しなければより抽象度の低い下位カテゴリーへとトップダウン的に照合は継続される。下位カテゴリーでも一致しない場合は、カテゴリーの特殊な一例として見なすか、同様に一致しない人物をまとめてサブタイプ化が行われる。

個人依存型処理では、その人物の情報がボトムアップ的に統合され、個人化した印象が形成される。その人物の社会的カテゴリーは、多くの情報の中のひとつとして扱われる。

連続体モデル

連続体モデルでは、二重処理モデルと同様に2つの処理様式を想定しているが、二重処理モデルではどちらか一方の処理様式が選択されるのに対して、フィスクとニューバーグの連続体モデルでは、カテゴリー依存型処理からスタートする。

判断対象の人物と出会うと、まず瞬間的に目で判断することが出来る情報を手がかりに、カテゴリー属性が同定される初期カテゴリー化が行われる。そこで相手への興味や関心、関連性を感じると確証的カテゴリー化の段階へと進むが、そうでなければ印象形成の処理は終了する。

確証的カテゴリー化では、活性化したカテゴリーの特徴と相手の特徴の照合がなされ、一致しなければ別のカテゴリーとの照合が行われる再カテゴリー化が行われる。これらの照合が一致した場合には、複数のカテゴリーに依存した処理やサブタイプ化など、より複雑なカテゴリー依存型処理が行われる。

再カテゴリー化でも一致しない場合には、相手についての個々の断片的な情報をひとつひとつ吟味しながらボトムアップ的に統合するピースミール依存型処理が行われる。ピースミール依存型処理は、二重処理モデルでの個人依存型処理に該当する。

認知資源という観点から見れば、少ない情報で効率的に処理できるカテゴリー依存型処理は認知資源を節約できる。人間の認知資源は限られているため、自分と関連性の高い情報をもっている人物だけに、情報をより精緻化出来るピースミール依存型処理を行うというのは理にかなっているといえる。


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