視覚認知の発達

乳児の視覚認知の測定法

認知機能の発達を解明するには、乳児の認知能力を測定する必要がある。しかし、乳児は言語でのコミュニケーションや運動機能に制限があるので、乳児の心の中で起きていることを知るのは容易ではない。

そこで科学者たちは、乳児の視覚機能に注目し様々な測定法を考案した。ここでは乳児の認知能力の測定法として良く用いられるものを記載する。

選好注視法

乳児には興味のあるものを長く見つめるという特性がある。これを利用して、左右の2つの図(視覚刺激)の提示位置をランダムに変え、どちらの視覚刺激をより注視するかの頻度や時間を測定する。この方法は選好注視法、またはPL法と呼ばれている。

選好注視法は、乳児が何に興味をもつのか、特定の図形の違いを見分けられるのかなどを調べたい場合に用いられる。

選好注視法には、オペラント学習を併用したオペラント選好注視法と呼ばれるものもある。選好注視法で提示された2つの視覚刺激のうち、一方を注視した場合にだけ行動が強化される好子(乳児が喜ぶご褒美など)を与えると、好子が与えられる視覚刺激をより注視するようになる。これは2つの視覚刺激を区別できなければ起こらない行動である。

馴化-脱馴化法

乳児には見慣れたものより目新しいものを長く見つめるという特性があり、これを利用した馴化ー脱馴化法という測定法がある。

同じ視覚刺激を繰り返し提示すると、最初のうちは興味を持って長く注視するが、回数を重ねる毎に注視時間が短くなる。そこで視覚刺激を別のものに変えると、再び注視時間は長くなる。このとき、2つの視覚刺激が異なるものであるという区別が出来なければ、注視時間は長くはならない。

馴化ー脱馴化法は、記憶や概念の形成などを測定する場合に用いられる。

視運動性眼振測定法

ディスプレイなどを用いて一方向に移動するものを提示すると、ものが流れる方向へのゆっくりとした眼球運動と逆方向への急速な眼球運動が繰り返される。この特性を利用したのが視運動性眼振測定と呼ばれるものである。主に視覚情報処理の低次処理特性を測定するのに用いられる。


色認知の発達

乳児の誕生直後の色覚の感度は悪いが、生後の早い段階で色の弁別を行うことが出来る。また、色覚も急速に発達し、生後3ヶ月頃には成人と同様の特性に近づく。

動き認知の発達

新生児に視運動性眼振測定を行うと反応があることが確かめられており、生後6週以降には急速に発達していく。

奥行き認知の発達

両眼性の奥行き認知が可能となるのは、生後4ヶ月前後であると考えられている。ただし、生後1ヶ月以内でも、接近してくる対象に防御反応を示すことから、単眼性の奥行き認知は可能であると考えられている。

顔認知の発達

生後間もない新生児であっても、母親の顔と他の人間の顔を区別することは出来るが、母親の横顔は再認することができない。これができるようになるのは生後3ヶ月以降であるとされており、この時期になると成人による顔認知と多くの部分で共通性をもつようになる。

注意機能の発達

注意のメカニズムは、生後すぐに働いていることがわかっている。生後1ヶ月前後では、特定の刺激に注意が引きつけられると、そこから別の刺激に注意を移すことが困難となるが、3ヶ月ほど経つと自分の目の動きをコントロールできるようになる。

対象の永続性の認知発達

乳児は目に見える対象しか意識することができないので、対象が物体に遮られて見えなくなっても、そこに対象が存在し続けるという対象の永続性を認識できない。生後8ヶ月前後で隠された対象の位置を数十秒間記憶できることが確認されているが、もっと早い段階で対象の永続性を獲得しているという実験結果もある。


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