感情の認知

心理学では、感情という言葉の他に情動や気分という言葉も使われる。情動とは、明確な原因によって引き起こされる強い感情で、持続時間は一般的に短時間である。気分とは、情動よりも弱い感情で、必ずしも意識できるとは限らず、原因が明確で無い場合もある。また、気分は情動よりも持続的な性質をもっている。

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一般的に感情の経験は、下記の4つの成分から成り立っているとされているが、どのような順序で起こるのかについては様々な説が唱えられている。


ジェームズ・ランゲ説

ウィリアム・ジェームズとカール・ランゲは、生理的変化が生じた後に感情の経験が生じると考えた。つまり、嬉しいから笑うのではなく、笑うから嬉しい。これは、末梢神経系の特定の生理的変化が特定の感情を生み出すと考えることができるが、末梢神経系と脳との結合を切断しても感情表出が見られることから、生理的変化が感情を生み出すというジェームズ・ランゲ説は批判もされている。

キャノン・バード説

ウォルター・キャノンとフィリップ・バードは、視床から末梢神経系に情報が伝えられ、その後に生理的変化が生じると考え、視床が感情を喚起させる中枢であるとした。

シャクター・シンガー情動二要因説

スタンレー・シャクターとジェローム・シンガーは、感情の生起には生理的変化とその原因の認知の両方が必要であるとする情動の二要因説を提唱した。彼らは実験によって、生理的・身体的変化が同じでも、状況によって感情が違うことを突き止め、状況の解釈が感情喚起の重要な要因であることを明らかにしている。

ルドゥーの感情二経路説

ルドゥーは感情の処理経路が、粗いが処理の速い経路と、処理は遅いが詳細な情報処理を行う経路があることを見出した。処理は遅いが詳細な情報処理を行う経路は、視床から大脳皮質を経由して扁桃体へ入るが、処理は速いが情報処理が粗い経路では、大脳皮質を経由しないで直接扁桃体へと入る。

ザイアンスとラザルスの論争

ロバート・ザイアンスは、感情と認知は独立しており、刺激が認知されなくても感情は生じると考えた。ザイアンスの貢献のひとつに単純接触効果の発見があるが、この現象が感情と認知の独立性を示す証拠であるとしている。

一方、ラザルスは、状況の解釈とそれを評価する認知的評価によって感情が生起すると考えた。ラザルスらは、認知的評価を1次的評価と2次的評価に分けて考え、1次的評価を自分にとって脅威的であるのか肯定的であるのか等の自分との関係性の評価とし、2次的評価を対処可能かどうかや、その対処方法についての評価とした。

ザイアンスの説とラザルスの説は、一見対照的なものに見えるが、ラザルスの1次的評価では意識されない無意識的処理も含まれる。つまり、無意識的処理を認知とするかどうかの解釈の違いによって対照的に見えているだけで、真っ向から対立する説とは言えない。


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