感性による評価
快感と不快感
心理学者のバーラインは、人は単純すぎる情報や刺激には快を感じないが、複雑すぎるものには不快を感じ、その中間に快感を最大にする覚醒ポテンシャルが存在する、という理論を提案した。快・不快に関係する刺激特性として、単純・複雑の他にも多くの刺激特性に当てはまるとされており、それらの刺激特性がほどほどの状態のときに、快は最大化される。
最適な覚醒水準は感情の種類によっても異なることや、快を感じるには効率よく知覚でき、記憶の負担を減らすことができるパターンが必要であることなどが、指摘されている。
黄金比
黄金比とは約1対1.618の比率のことで、ピラミッドやパルテノン神殿などの歴史的建造物や美術品などに存在している。物理学者のグスタフ・フェヒナーは黄金比の妥当性の検証を行っている。結果は、黄金比は美しいと答えた割合は高いものであったが、それでも全体の3割程度であったという。
最近の研究では、黄金比を保った画像と黄金比を崩した画像を提示したときの脳の活動をfMRIで測定した結果、脳の異なる部位が活動することが示されている。
プレグナンツの法則
形態が全体として最も単純で最も規則的で安定した秩序ある形にまとまろうとする傾向をプレグナンツの法則と呼び、ゲシュタルト心理学の中心的概念とされている。ゲシュタルトとは、部分的特徴や要素ではなく、全体のまとまりを表す言葉である。ゲシュタルトの法則には、パターン認知で解説した近接の要因、類同の要因、閉合の要因、連続の要因などがある。
ゲシュタルト心理学では簡潔で安定している形態をよいパターンとして考えるが、このよさを定量的にとらえることは容易ではない。
単純接触効果
対象に繰り返し接触することにより、対象への親近性が高まり好意が増加する現象を単純接触効果と呼ぶ。単純接触効果には、見るから好きになるのか、好きだから見るのか、という問題が提起されていたが、下條信輔らは実験によってこれらを明らかにしている。
彼らは、2つの顔写真のうちどちらが魅力的かを判断させた。そのときのボタン押しによって決定されるまでの観察者の眼球運動を測定した結果、どちらかの写真を選ぶ1秒くらい前から、視線の向きが偏り始めていることが明らかとなり、これは視線のカスケード現象と呼ばれている。また、同様の実験で魅力的でない写真を選ばせる実験では、視線のカスケード現象は起こらないことから、見るから好きになるという証拠となっている。
- 『認知心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2010)
- 『認知心理学 (放送大学教材)』 放送大学教育振興会(2013)
- 『錯覚の科学 (文春文庫)』 文藝春秋(2014)