忘却の要因

長期記憶の忘却の要因については、減衰説、干渉説、検索失敗説が提唱されている。


記憶の減衰説

心理学者のバートレットは、実験参加者に物語を記憶させた後、一定の保持期間の後に再生テストを繰り返す反復再生法の実験を行っている。この実験結果によると、物語の再生量は保持期間が長くなるほど減少することが明らかになっており、これは記憶の減衰説と呼ばれる。

バートレットはさらにその実験から、再生内容の変化に下記のような特徴があることを明らかにし、これらはスキーマの働きによるものであると考えた。

記憶の干渉説

ジェンキンスとダレンバックは、実験参加者に意味のない10個の単語を完全に記憶させ、一定の時間睡眠をとった場合と睡眠をとらない場合の忘却の程度を比較する実験を行っている。その結果、睡眠をとらない場合のほうが睡眠をとった場合よりも忘却が進行が早いことがわかった。この結果から、覚醒時の方が睡眠時よりも多くの情報を取り入れるため、より多くの干渉が生じたのだと彼らは考えた。つまり、忘却は時間経過によって減衰するのではなく、他の情報との干渉によって忘却が進んでいくと考えたのである。これが干渉説である。

干渉には2種類あり、ある事柄についての記憶が、それ以前に経験した記憶によって干渉を受けることを順向抑制と呼び、その後に経験した記憶によって干渉を受けることを逆向抑制と呼ぶ。

検索失敗説

日常生活の中で、あるきっかけによって記憶が思い出されることがある。この事実から、忘却とは記憶が消去されるという単純な現象ではないのではないかと、心理学者たちは考え、様々な実験を行っている。

単語を記憶させるときに、その単語のカテゴリーに属する単語を記銘材料とし、そのカテゴリー名を手がかりとして与えた場合と与えない場合での、単語の再生を比較する実験が行われている。この実験の結果、手がかりが与えられていない場合には再生できなかった単語でも、手がかりが与えられると再生できる場合があることが判明し、再生できないことが忘却ではないことが示されている。

他の実験では、記銘時と再生時の実験参加者の情動状態や環境的文脈が異なる場合よりも、同じ場合のほうが再生成績が良くなることが明らかにされており、これは記憶の状態依存性と呼ばれている。


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