古典的条件づけの基本的特徴

古典的条件づけには、そのほとんどに見られるいくつかの基本的な特徴をもっている。


獲得

ほぼすべての古典的条件づけにおいて、CS(条件刺激)とUS(無条件刺激)を繰り返し対呈示することでCR(条件反応)の割合は徐々に増加する。このCRの割合が増加することは「CRが強化される」「CRの強度が増加する」と呼ばれる。また、条件づけ実験においてCRの強度が増加していく期間は獲得期と呼ばれる。この獲得期に対呈示をやめてCSのみの呈示を繰り返してもCRは強化されない。

CSとUSの対呈示によってそのまま強化され続けると、あるところでそれ以上のCRの増加は見られなくなる。この反応の割合が安定する最高値は漸近値と呼ばれる。漸近値に影響を与える最も大きな要因のひとつは、USの強度やサイズである。基本的には強い刺激ほど漸近値は高くなる。

また、USやCSが強いほど、より早い条件づけが生じる。

消去

古典的条件づけは、時間経過だけではCRは消失しない。条件づけの試行後、数日あけてからCSを呈示すると再びCRを示す。CRを減少させて消去するには消去手続きが必要になる。消去手続きはいたって単純で、CSとUSの対呈示をやめ、CSだけを繰り返し呈示する方法である。

ただし、CRが消去されても、条件づけ前とまったく同じ状態に戻るわけではない。それは以下の自発的回復、再獲得、脱制止などでみられる。

自発的回復

条件づけされた反応を消去手続きによって反応が起こらなくなるまで消去したとしても、翌日にCSを呈示するとCRは回復する。この条件反応の再出現は自発的回復と呼ばれる。これは条件づけによって学習したCSとUSの結びつきが完全に破壊されたわけではないことを示している。

自発的回復が確認された後も消去手続きを繰り返し、翌日に確認すると再び自発的回復が見られる。ただし、初日よりも回復量は小さくなる。基本的にはこの消去手続きを毎日繰り返すと、自発的回復の量は徐々に小さくなり、最終的に全く見られなくなる。

再獲得

一度獲得した条件反応を消去し、再び獲得させる条件づけを行うと1回目よりも速い学習を示す。これは、自発的回復が見られなくなるまで消去手続きを行った後に再獲得をさせても、1回目の獲得よりも確実に速いので、自発的回復だけが要因ではない。

再獲得の後に再び消去し、もう一度再獲得をさせると学習速度はさらに速くなる。

外制止と脱制止

条件づけの形成後に、CSと同時に別の新奇刺激を呈示、あるいはCSの直前に新奇刺激を呈示すると、CRは小さくなる。パブロフはこれを外制止と呼び、新奇刺激がCSに対するCRを抑制するためだと考えた。

一方、CRを消去してから新奇刺激とCSを呈示すると、CRは一時的に回復することがある。パブロフはこれを脱制止と呼び、消去手続きによって生じた制止メカニズムを妨害したためだと考えた。

条件性制止

通常の古典的条件づけでは、CSを呈示するとCRを生起する関係にある。このようなCSは興奮性のCSと呼ばれ「CS+」と略されることもある。一方、CRを減少させるCSは制止性のCS、あるいは条件性制止子と呼ばれ「CSー」と略されることもある。CSは特定の手続きによって、制止的な特性を発達させることが分かっている。

般化と弁別

古典的条件づけを行なった後、そこで用いられたCSと類似した刺激を呈示するとCRを誘発することがある。このように、類似した刺激に条件づけが転移する現象は般化と呼ばれる。基本的にはCRが誘発される割合はCSが最も高くなり、CSとの類似性が低くなるほどCRの割合も低くなるという般化勾配を示す。

逆に、CSに類似した刺激に反応しないことは弁別と呼ばれる。般化する類似刺激でも学習によって弁別することができる。


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