反応と強化子の役割

潜在学習

トールマンとホンジックは、自発的行動の学習に必ず強化が必要なのかという問いに対し、潜在学習実験と呼ばれる有名な実験を行なっている。

実験はラットの迷路学習であるが、ラットを3つの群に分け1日1試行を17日間行なっている。第1群はゴール地点についても餌が与えられず迷路から出されるだけで、第2群はゴール地点で餌が与えられる。第3群は10日目までは餌が与えられず、11日目以降は餌が与えられた。

その結果、強化が行われなかった第1群はあまり成績が良くならないのに対し、毎回強化された第2群は典型的な学習曲線を示した。問題となる第3群では、11日目までは第1群と変わりない成績を示したが、12日目以降は劇的に成績が良くなった。それは第2群と同程度あるいはそれ以上の成績である。

第3群のラットだけがわずか1回の試行でここまで学習したとは考えにくいので、強化されていない試行においても何らかの学習が生じていると結論づけることができる。

トールマンとホンジックは、強化は新しい反応の学習には必要ないが、反応の遂行には必要であるとし、学習と反応の遂行を区別した。

トールマンの認知地図

ソーンダイクは反応の遂行がなければ学習は生じないと予測し、次のような実験を提案した。

金網で作られた外側の景色が見える小さな車にラットを入れ、迷路のスタート地点から食餌のあるゴール地点まで正しい道順で走らせ、餌を与える。これを繰り返し行い、その後に迷路を自由に走らせた場合と、車で迷路を移動する経験をしていない初めて迷路を走るラットとを比較するという実験である。この場合、どちらのラットも同じように振る舞うはずであるとソーンダイクは予測している。

先の潜在学習の実験と似ているが、トールマンとホンジックの実験は強化と学習の関係性を示すものであるのに対し、こちらは反応の遂行と学習の関係性を示すものである。

ソーンダイクの予測に対しトールマンは、オペラント条件づけは単に反応を強めるだけではなく、期待の形成に関連していると考えており、ラットはこの道順の先に強化子があるという期待を発達させ学習が行われるとしている。また、ラットは反応がなくても迷路の空間的配置について学習するとしており、トールマンこれを認知地図と呼んだ。当時は認知心理学の分野が出現していなかったことを考えると、この解釈はかなり先駆的であるといえる。

その後、ソーンダイクの提案したものと同様の実験が行われているが、ソーンダイクの予測とは逆の結果が得られている。つまり、車に乗せて迷路を移動したラットと普通に迷路学習を行わせたラットとでは、学習効果に違いが見られなかったのである。この結果から学習に反応の遂行は必ずしも必要ではないと結論づけることができる。


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