古典的条件づけの標準的な手法

イヌにメトロノームの音を聞かせると唾液が分泌されるという古典的条件づけを例に考えてみる。

イヌに餌を与えると唾液を分泌させる唾液反射が行われる。このときの餌は無条件刺激、唾液を分泌させる反応は無条件反応と呼ばれる。無条件というのは刺激と反応の関係が学習によって得られたものではなく、生得的なものであることを表している。古典的条件づけを行うには、生得的に行われる反応と刺激のペアが必要になる。

もう一つの刺激であるメトロノームの音は条件刺激と呼ばれる。条件刺激は学習前の段階では無条件反応を誘発しない刺激である必要があり、このような刺激は中性刺激と呼ばれる。学習前のイヌにメトロノームの音を聞かせても唾液は分泌されないことが確認できるので、イヌにとってメトロノームの音は唾液の分泌反応を誘発しない中性刺激であるといえる。

古典的条件づけの単純な方法ではまず、イヌに条件刺激であるメトロノームの音を聞かせ、続けて無条件刺激である餌を呈示する。初期の試行ではメトロノームの音だけでは唾液は分泌されないが、繰り返し試行を行っていくとメトロノームの音を聞くだけでイヌは唾液を分泌させるようになる。このときの唾液を分泌させる反応は条件反応と呼ばれる。

一般に、中性刺激である条件刺激が、生得的な反射を誘発させるように条件づけされることを古典的条件づけと呼んでいる。ただし、無条件反応と条件反応は必ずしも完全なコピーというわけではない。

無条件刺激、無条件反応、条件刺激、条件反応は多くの書籍で、頭文字をとってアルファベット二文字で以下のように略される。

古典的条件づけは多くの異なる反応で観察されているが、実際に研究で使われてきた反応はそれほど多くはない。以下に示す眼瞼条件づけ、皮膚伝導反応、条件性情動反応、味覚嫌悪学習が代表的なものである。


眼瞼条件づけ

主にヒトやウサギのまばたきを対象として研究されてきた。代表的な例として、無条件刺激(US)には目に空気を吹き付ける、無条件反応(UR)はまばたき、条件刺激(CS)には音や光、触覚刺激などが用いられる。

条件反応(CR)は当然まばたきであるが、USによるまばたきは大きくて急速であるのに対し、CSによるまばたきは小さく緩慢である。つまり、URとCRは完全に一致するわけではないことがわかる。

皮膚伝導反応

皮膚の電気伝導率は恐怖や驚きなどの感情によって変化するので、それを測定する方法である。皮膚の電気伝導率の変化がUR、感情を変化させる刺激がUSとなるが、確実に伝導率を増加させる刺激として電気ショックが用いられてきた。

条件づけが比較的容易であるため、CSには音や光以外にも多様で複雑な刺激が用いられることもある。

条件性情動反応

CSの呈示後に短い電気ショックなどの嫌悪刺激によって条件づけを行い、その後CSのみの呈示でどのように行動が変化するのかを測定する方法である。

通常はラットが実験対象として用いられ、CSには視覚刺激、聴覚刺激、触覚刺激などが用いられる。眼瞼条件づけよりも持続時間は長く、条件づけは早く形成される。

味覚嫌悪学習

実験対象が食べたことのない特徴的な味のする飲食物をCSとして用い、それを飲食した後にUSとして動物の気分が悪くなる薬物が投与される。不快な気分が十分に回復した後で、CSとして用いられた飲食物を再び与えてもほとんど摂取しようとはしなくなる。

味覚嫌悪学習は非常に早い段階で条件づけされ、持続時間も長く永続的であるともいわれる。1試行だけで条件づけされる場合があることや基本原理と一致しない部分もあり、古典的条件づけとは異なる学習であるとする心理学者もいる。ただし、現在では質的な違いではなく量的な差異であるとする見解が有力である。


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