ソーシャルネットワーク

ネットワーク構造

人と人とのつながりは複雑なネットワーク構造を作り上げているが、これはソーシャル・ネットワークと呼ばれている。各箇所ではネットワークのまとまりができ、このまとまりはクリークと呼ばれ、クリークが集団であることが多い。


オピニオンリーダー

ソーシャル・ネットワークに関する先駆的研究として、ラザースフェルドの研究がある。アメリカ大統領選挙でマスメディアの果たす影響力の強さを調査したときに、彼とその仲間が偶然にも発見したのが、オピニオンリーダーを中心に政治行動が展開されていることだった。

オピニオンリーダーとは、集団の意思決定などで大きな影響力を持っている人物である。その後の研究で、政治行動以外の消費者行動などの日常生活においても、オピニオンリーダーを中心に展開されていることが明らかとなっている。そこで提案されたのが、マスメディアからの情報がオピニオンリーダーへと伝わり、オピニオンリーダーから集団の中のフォロアー(オピニオンリーダーに従う人)へと拡散するという2段階のモデルである。

イノベーションの普及過程

消費者行動の分野に決定的ともいえる影響を与えたのが、ロジャースによるイノベーション研究である。ロジャースは新製品がコミュニティの中でどのように採用され普及していくのかを調べていった。始めは農作物や農薬などの製品であったが、研究対象は時代とともに変化していき、パソコンや電子ネットワークなどにも及んでいる。

この研究によって明らかにされたことは数多いが、そのひとつとしてまず挙げられるのが、イノベーションの採用時期には個人差があるということである。ロジャースはこれを採用者カテゴリーという概念によって示した。イノベーションは、まず全体の2.5%を占めるイノベーターによって採用されるが、イノベーターは他者に対する影響力が限定的であるため、普及速度は緩やかである。その後、全体の13.5%を占める初期採用者によって取り入れられる。この初期採用者は前述したオピニオンリーダーにあたり、イノベーションはフォロアーにあたる前期追随者、後期追随者へと急速に普及していくことになる。そして最後に、そのイノベーションが社会的に当たり前になる頃に、遅滞者へと広まっていく。この普及過程を示したモデルは、現在においてもマーケティングなどの分野で使われることが多い。

そしてもうひとつ重要なものとして、ブリッジと呼ばれるネットワーク上の位置づけがある。ブリッジは内集団と外集団をつなぐ橋渡しのような役割を果たし、内集団にイノベーションが導入される経路となる。

オピニオンリーダーは、外集団とのつながりを持っており、なおかつ内集団の成員から支持されている必要がある。支持されているか否かが、上述したイノベーターとオピニオンリーダーの決定的な違いとなる。

弱い紐帯と強い紐帯

クリーク内でも特に親密なやり取りの多い人々とのリンクは強い紐帯と呼ばれる。強い紐帯は基本的にはクリーク内に見られる。強い紐帯に対し、つながりはあるがそれほど頻繁に親密な交流があるわけではないリンクは弱い紐帯と呼ばれる。弱い紐帯は主にクリークの外側に見られるが、クリーク内にも存在する。クリークの規模が大きいほど、弱い紐帯の割合が多くなる。

強い紐帯では結束的なネットワークを持っており、互いのことをよく知っているため、強い凝集性や高い同質性がある。その一方で、互いがしばり合ってしまうため、新たなつながりを作り出す機会を失ったりすることもある。

弱い紐帯では自分の所属するクリークの外側の相手と接触することが多く、自分のクリーク内にはない情報を獲得することができる。強い紐帯での情報のやり取りでは、新しい情報や違う視点での考え方が生まれにくいため、弱い紐帯での情報のやり取りは非常に重要になる。この弱い紐帯が、ロジャースのイノベーション研究におけるブリッジになるのである。しかし弱い紐帯からの情報は信憑性に欠けるため、その判断が求められることや、そのネットワークを維持するための時間的コストがかかることなどの、デメリットも存在する。

類同性の原理

強い紐帯の特性として、類似した属性を持つ人々が結束的なネットワークを形成しやすい類同性の原理があげられる。類同性には、類似しているから紐帯を結び合うという側面と、紐帯を結んだ後にコミュニケーションを重ねることでお互いが類似してくるという側面を持っている。


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