判断と認知容易性

感情情報機能説(気分が与える影響のページ内で解説)では、気分が判断材料として用いられる可能性が示されたが、気分だけではなく認知しやすいかどうかといった主観的な感覚が判断に用いられることがわかっている。


単純接触効果

初めて接する対象に繰り返し接触することにより、その対象に対する好意が上昇する現象を単純接触効果と呼ぶ。これは以前に接触したことがあると自分では意識できなくても効果があることがわかっている。

単純接触効果は繰り返し接することにより、認知的な情報処理が容易になるためであると考えられている。このような処理の容易さは処理の流暢性と呼ばれる。例えば、何度も目にするようなテレビCMや電車の中吊り広告に映る商品、あるいは通勤・通学中によく見かける人に好意を抱く場合などは、単純接触効果が影響していると考えられる。ただし、単純接触効果は対象が好きでも嫌いでもないような場合に生じる現象であり、ネガティブな感情を持っている対象に何度も接することによって、好意が上昇するわけではない。

ミシガン大学とミシガン州立大学は、単純接触効果の面白い実験を行っている。数週間にわたって学生新聞の一面に広告のような囲みを設け、そこにトルコ語またはトルコ語風の単語を代わる代わる登場させた。各単語が登場する回数は1回のものもあれば25回のものもありまちまちである。これらの広告掲載期間が終了したあとで学生に質問票を送り、単語がよいことを意味していると思うか、わるいことを意味していると思うかを尋ねた。その結果、登場頻度が最も多かった単語は、1、2回しか登場しなかった単語に比べ、よいことを意味すると回答した学生がはるかに多かった。これは、図形や人間の顔を使った他の実験でも同様の結果が得られている。

単純接触効果は発見者の名前を取ってザイアンス効果とも呼ばれる。ザイアンスは、単純接触効果は生物学的にみて極めて重要な意味を持っており、あらゆる動物に当てはまると主張している。新たに出現した刺激は害を及ぼすかもしれないため慎重に反応する必要があり、新奇な刺激に疑いを抱かない動物は生き延びる可能性が低いが、何度も接することによってこうした刺激は悪いことが起きない安全を示す信号となるためであるとしている。実際に人間以外の動物でもこうした研究が行われており、人間の場合と同様の結果が得られている。

処理の流暢性

繰り返し対象に接する場合以外にも、処理の流暢性が印象に影響を与えることがわかっている。例えばウィンキールマンとカシオッポは、参加者に物体の写真を見せる実験において、写真のいくつかを、写真を見せる直前にそこに映る物体の輪郭だけを示して認識しやすくした。輪郭の呈示はほんの一瞬で、参加者は見たことには気づかない。このときに、外からではわからない表情の微妙な変化を測定したところ、輪郭が呈示された写真では、微かな笑みを浮かべたり表情が和らいだりした。つまり、事前に輪郭を示して写真に映る物体の認知的負荷を軽減することで、その写真に対する好意が増したということである。

検索容易性

想起のしやすさが自己評価に影響を与えることは「ヒューリスティック」のページの利用可能性ヒューリスティックの中でみた。

単純接触効果においても、繰り返し対象に接することによってその対象の重要性が増し、検索が容易になり認知にかかる負荷が軽減されるために好意が増すと考えることもできる。


参考書籍
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