態度と行動
「認知的斉合性理論」のページでは、行動に合わせるように態度が変わることを見てきたが、そもそもなぜ態度とは違う行動をとってしまうのかなど、態度と行動の関係性について見ていく。
合理的行動理論
フィッシュバインとアイゼンは、行動に対して最も大きな影響を与えるのは態度ではなく行動意図であると主張した。これは、行動によって得られる結果を合理的に判断する過程に焦点を当てたことから、合理的行動理論と呼ばれている。この理論によると、自分にとって重要な人たちがその特定の行動を認めてくれるかどうかという、彼らが主観的規範と名付けたものと、行動に対する態度が行動意図に影響を与えているという。
後にアイゼンは、行動意図に影響を与える要因として行動統制感を理論に追加した計画的行動理論を提唱した。行動統制感とは、自分はその行動をとることができるという主観的な感覚である。
まとめると、行動の最善の予測因子は態度ではなく行動意図であり、行動意図は主観的規範と行動統制感、そして行動への態度に影響される。熟慮や計画が求められるような行動に関しては、多くの研究からこの理論を支持する結果が得られている。
態度のプライミング効果
自分にとって重要な選択になることを意識している場合には、良い結果が得られるような行動を意図して選択するであろう。しかし、私たちのすべての行動が意図したものというわけではないことは、他の研究からも明らかである。例えば「プライミング効果」のページの中で見たイデオモーター(観念運動)がある。このページで紹介した研究では、非意識的な観念の活性化においても行動が変化することを示している。これと同じように、態度もプライム刺激によって活性化すると考えられている。
態度の活性化に関する研究では、実験参加者の意図的な制御による反応を防ぐために、本人も意識できないような潜在的態度を測定する方法が考案されている。代表的なものとしては、グリーンワルドらによる潜在的連合テストがあり、現在でもさまざまな研究に応用され、態度の活性化が行動に影響を与えることを示す研究が次々に行われている。
態度は「好きー嫌い」「快ー不快」という感情的な成分が根幹にあることを考えれば、「気分が与える影響」の中で示したような、連合ネットワークモデルに感情をノードとして組み込んだ感情ネットワークモデルによって、態度が行動に影響を与えることを説明することができる。
二重過程
説得から態度変容への処理過程と同様に、態度と行動の関係性においても二重の処理過程が関わっていることがわかる。一方は意識的な処理過程で、もう一方は非意識的な処理過程である。
ファジオらは、態度や意図についての意識的な熟考が行なわれるには、意識的に想起することへの動機づけと機会が必要であるとしている。これについては現在でも実証的研究が進んでいる。
- 『社会心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2010)
- 『Social Psychology: Goals in Interaction (6th Edition)』 Pearson(2014)
- 『心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2004)
- 『パーソナリティ心理学―全体としての人間の理解』 培風館(2010)