公共財

外部性以外で、市場が効率的な資源配分に失敗するケースとして公共財がある。

公共財とは、その財を消費しても他の人がその財を消費できる量は減らず、消費者間で競争が起こらない非競合性と、特定の消費者を消費から排除することが難しい非排除性を満たすものである。逆に、競合性と排除性を有する財は私的財と呼ばれる。

もう少し細かく見ると、非競合性と非排除性の両方を満たすものは純粋公共財と呼ばれ、どちらか一方だけを満たすものは準公共財と呼ばれる。純粋公共財の典型的な例として、政府による外交や国防が挙げられることが多い。特定の人物や集団だけを、外交や国防の利益を受けないように排除することは困難であるし、排除しなくても追加的な費用が発生しないことの方が多い。これ以外にもいくつか考えられるが、純粋公共財の条件を満たす財はそれほど多いわけではない。


限界評価

公共財をどれだけ供給すれば良いのかについては、限界評価という概念が役に立つ。

限界評価とは、財の消費量を限界的に1単位増加させたときに消費者が支払ってもよいと考える金額のことである。

個人の限界評価

公共財の最適供給条件(部分均衡分析)

各個人の限界評価を足し合わせたものが、社会全体の限界評価である社会的限界評価となる。

社会的限界評価

この社会的限界評価と公共財の供給曲線(限界費用)の交点が、公共財の最適供給量となる。

公共財の最適供給量

リンダール均衡

政府は公共財の最適供給を実現するために、公共財の生産者にいくら支払えばよいのか、そのお金を誰からいくら徴収するのかという問題がある。その方法の一つとしてリンダール均衡と呼ばれるものがある。

政府は個々人の限界評価を調査して、社会的限界評価と限界費用が一致する最適な供給量を計算し、社会的限界評価に等しい価格で完全競争的な生産者に発注する。そして、各消費者は、自分の限界評価に比例した金額を生産者に支払うというのがリンダール均衡である。

リンダール均衡は、限界評価が高い人ほど高い金額を支払うため、受益者負担の原則は満たされる。ただし、限界評価は本人にしかわからないので、負担を軽くするために過小申告する人が出てくる可能性もある。これはフリーライダー問題と呼ばれる。限界評価のような客観的に確認するのが難しい指標の場合は、必ずしも受益者負担の原則を満たすわけではない。

公共財の最適供給(一般均衡分析)

ある財を私的財として使用するか公共財として使用するかという2つの選択肢しかない場合の公共財の最適供給量を見る。

私的財と公共財の2つの財しかない場合、経済全体の生産可能性集合は以下の図のようになる。

限界変形率

生産可能性集合の境界線は、資源を無駄なく使用して最大の生産を行っている状態であり、生産可能性フロンティアと呼ばれる。公共財の最適供給量を決める重要な要因は、この生産可能性フロンティアの傾きであり、限界変形率(Marginal Rate of Transformation)と呼ばれ、その頭文字をとってMRTと書かれたりする。このとき、「公共財Qの私的財Xに対する限界変形率」というとき、MRTQXと表される。これは、公共財を限界的に1単位増やすために、私的財の量をどれだけ犠牲にしなくてはならないかということを表している。

次に、消費者の私的財と公共財に対する評価を無差別曲線で見てみる。無差別曲線とは2つの財を交換しても効用が同じになる点を結んだものである。無差別曲線上のある点の傾きは、一方の財をもう一方の財と交換してもよいと思う比率に等しく、この比率を限界代替率という。限界代替率(Marginal Rate of Substitution)は、その頭文字をとってMRSと書かれたりする。このとき、消費者iの公共財Qの私的財Xに対する限界代替率というとき、MRSQXiと表される。

公共財を増やすのに犠牲にしなければならない私的財の量である限界変形率と、公共財を増やすために消費者が提供してもよいと思う私的財の量である限界代替率を比較すれば、公共財の最適な供給量がわかる。

消費者i=1,,Iとすると、各消費者の限界代替率の和はi=1IMRSQXiとなる。これが、限界変形率と一致している状態、

i=1IMRSQXi=MRTQX
が、公共財の最適供給条件となり、発案者にちなんで、サミュエルソン条件と呼ばれる。


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