脳の進化

マキャベリ的知性仮説

体の重さと脳の重さの比率を考えると、人間は他の動物より大きな脳をもっている。なぜ人間は大きな脳をもつ必要があったのかについては、霊長類の社会性によるものだという説がある。この仮説はマキャベリ的知性仮説、または社会脳仮説と呼ばれている。

群れを作って生活する動物は多いが、霊長類の場合は親子関係などの社会的関係が強く、集団内や集団間の競争・協力なども生じ、社会が複雑化していく。このような複雑化した社会で血縁関係などの人間関係の認知やコミュニケーションの多様化など、処理しなければならない情報が増えたために脳が発達したという説である。


道具の使用

ヒトを含む霊長類は道具を使用する能力を持っているが、その他の動物でも道具を使用することが知られている。しかし、ヒトと比べるとその能力は限定的である。

ジャコーモ・リッツォラッティらは、サルが物をつかむ際の脳のニューロン活動を調べていたとき、サルの目の前にいる人間が物をつかんでも、サルのニューロンが活動することを発見した。このようなニューロンはミラーニューロンと呼ばれており、ヒトや一部の鳥類にも存在していると考えられているが、十分な証拠は見つかっていない。

ただし、リッツォラッティらの実験によると、ヒトの場合でも自分で行動するときと他者の行動を観察するときの両方で、サルのミラーニューロンが発見された場所と類似した部位が活動することを発見している。

ミラーニューロンは、他者の行動の意図を理解する基盤としてや、模倣による学習において重要な役割をしていると考えられている。また、言語獲得においても機能しているという説もある。

言語の使用

ヒト以外の霊長類も音声を発することは知られているが、自然発生による言語の使用は確認されていない。

チンパンジーは発生器官の構造上ヒトのように多くの母音を出すことは出来ないが、手話のような視覚言語を獲得できることが知られており、チンパンジーなどの類人猿には言語を獲得できる能力が芽生えていることが示されている。


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