アンビバレンス(両価性)
ひとつのものごとに対して、相反する感情を同時に持ったりすることは、アンビバレンスや両価性と呼ばれる。人が悩みを抱えるときに両価性が強まった状態となりやすい。悩み自体が両価的なジレンマであるとも言える。
何らかの抵抗や禁止を受けたとき、反抗しようとする感情をもつことはよくあることだが、両価性の強い人では特に起こりやすい。思春期に反抗的になりやすいのも両価的な矛盾を抱えていることが多い。
一方で、ものごとに相反する側面があるということを受け入れられず、ひとつの視点でしかものごとを見れない場合も、それはそれで問題が起きやすい。自分の視点でしかものごとが考えられないので、ある種の頑固さをもっており、他人の意見を受け入れられないことがある。
アンビバレンスはどちらかに偏り過ぎればある種の生き難さを感じるが、それが能力となることも多い。
逆説的な反応
両価性の強まっている相手に何かを強要すると、正反対の行動を行うことがある。子供が親に勉強しなさいと言われてやる気が無くなるのもこれである。子供にはよくあることだが、これが大人になっても頻繁に現れる場合は社会生活を営む上で障害となることもある。
逆説的な反応を示す人は何らかの不安を抱えていることが多いが、そのなかでも愛されていないことに対する不安が挙げられる。自分に興味を持って欲しい、自分だけを見て欲しいという欲求から正反対の行動を取ってしまう。愛されたいがゆえに心理的に優位に立とうとするのである。
愛されないならこちらから嫌われるという心理が働くこともある。相手が期待していることとは正反対の行動を取ることで嫌われようとするのである。
カウンター・アイデンティティ
逆説的な反応のひとつとして、カウンター・アイデンティティと呼ばれるものがある。親や社会から認められないものを否定するのではなく、あえて認められない存在になろうとすることに価値を見出すのである。
周りから認められないというのは自己否定に繋がりやすいので、価値の逆転を行うことで自己肯定しようという一種の防衛反応である。反社会的な活動などはカウンター・アイデンティティによるものであることが多いと言われている。