正常と異常
心理的な異常を考える場合、正常と異常を区別するために何らかの基準が必要となる。精神病理学では医学的な病理性についての診断基準が設けられているが、異常心理学における心理的異常については多元的な基準によって判断される。
主な基準としては、適応的基準、価値的基準、統計的基準、病理的基準の4つが挙げられる。
これらは絶対的基準ではなく、所属する集団や時代によっても判断は異なる。例えば、集団の外部の人間から見て、特定の人物の行動が異常に思えたとしても、その人物が集団内でうまく適応している場合には正常と言える。正常なのか異常なのかは、本人やその人に関わる人間がどれだけの苦悩を感じているかにもよる。
適応的基準
所属する社会や集団に適応しているかどうかによる基準で、その判断には主観的判断と社会的判断がある。
- 主観的判断・・・本人が自分は社会や集団に適応できていないと判断する場合で、精神的または肉体的に苦悩を伴っていることが多い。
- 社会的判断・・・他者がその人は社会的に適応できていないと判断する場合である。このとき、個人的な偏見や要求が含まれる場合もあるので注意が必要である。
主観的判断と社会的判断が異なることもある。また、まったく同じ症状を示していても、所属している集団の環境によって適応か不適応かの判断は異なる。
価値的基準
所属する社会の法律や常識などの合理的な理念体系による基準で、主に生活的判断と論理的判断がある。
- 生活的判断・・・道徳観や社会通念、倫理観など日常的な規範意識による判断。
- 論理的判断・・・法律や慣習など制度的規範による判断。
理念体系は時代や地域によって異なるので、正常か異常かの判断も時代や地域に左右される。
統計的基準
所属する集団での平均的な行動、価値観、思考を基準として、基準からどれだけ離れているかによって判断する。
病理的基準
精神病理学を基に、医学的に疾病と診断されるかどうかによる判断。
参考書籍
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