奥行きの知覚
網膜に投射される像は2次元の平面画像であるにもかかわらず、人間は3次元の世界を知覚している。写真やテレビなども平面画像であるが、奥行きを知覚している。人間が平面画像の情報から奥行きの知覚に利用される手がかりは、単眼性のものと両眼性のものに分けられる。
単眼性の奥行き認知
- 相対的大きさ…対象の大きさを知っている場合には、見えている対象の大きさを手がかりに、その対象までの距離を推測することができる。
- 重なり…ある対象が別の対象の一部を覆っている場合には、覆われている対象が奥に知覚される。
- 線遠近法…平行線は遠ざかるほど、その幅が狭くなり、一点に収束する。
- 大気遠近法…遠くにある対象は、ぼやけたり色がかすんで見えたりと、明瞭度が低下する。
- きめの勾配…床や天井など、一様な模様が広がっているとき、遠くにあるほどきめが細かくなる。
- 運動視差…移動している観察者が、ある対象を注視しているとき、注視対象よりも遠くにある対象は、観察者と同じ方向に移動しているように見え、注視対象よりも近くにある対象は、観察者とは逆方向に動いているように見える。
この他にも、陰影や濃淡、水晶体の厚さの調整量などが、奥行きの手がかりとなる。
両眼性の奥行き認知
- 輻輳…両目で一点を凝視するときに両視線が交わる角度を輻輳角を呼び、凝視点が近くにあるときには、この輻輳角は大きくなり、凝視点が遠くにあるときには小さくなる。このときの動眼筋の緊張度が奥行き手がかりとなる。
- 両眼視差…人間の眼は左右に離れてついているので、一つの対象を両目で見ると、左右の目の網膜には少しずれて投影される。このずれを両眼視差、または両眼網膜視差と呼ぶ。この両眼視差を脳内で処理することで、対象を奥行きのある立体像として知覚する。
参考書籍
- 『認知心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2010)
- 『認知心理学 (放送大学教材)』 放送大学教育振興会(2013)
- 『錯覚の科学 (文春文庫)』 文藝春秋(2014)
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