顔の認知

顔の認知も物体の認知の一種であるが、人の顔の認知では通常の物体とは異なる認知がなされていることが明らかにされている。顔の認知では、目や鼻、口などのパーツごとに認知され統合されるのではなく、顔全体として認知されていることがわかっている。また、未知の顔と既知の顔では処理過程が異なることが示唆されている。

顔の認知が通常の物体の認知とは異なる例として、サッチャーの錯視といわれる、倒立提示の効果があげられる。英国の元首相のサッチャー女史の顔写真を2枚並べて、倒立提示したものであるが、1枚は目と口を逆さに貼り直したものとなっている。この2枚の写真は、倒立した状態では大きな違和感を感じられないが、正立した状態に戻すと劇的な違いがあることに気づく。これは、通常の顔パターンの認識ができにくく、部分間の関係についての情報が有効に読み取れないために起こるとされている。


表情の認知

表情の認知も顔の認知と同じく、固有の認知プロセスがあると想定されており、モデルとして大きく分けると2つの説が提唱されている。

心理学者のポール・エクマンは、人の表情は文化や環境に依存せず、人類に普遍的な特徴であるとしている。エクマンは喜び、悲しみ、怒り、恐怖、嫌悪、驚きという6つの表情が基本表情であるとし、他の表情とは区別され、はっきりと識別されるものであるとしている。このように、いくつかの表情のカテゴリーに分けられ、それらの表情を離散的にとらえる考え方はカテゴリー説を呼ばれる。

表情は離散的ではなく、快ー不快を示す情動価と、覚醒ー睡眠を示す覚醒度の2つの次元で構成された、連続的なものであるとする考え方は次元説と呼ばれる。

怒りの優位性効果

怒りなどの威嚇の表情がその他の表情よりも早く認識されることを怒りの優位性効果と呼ぶ。表情認知研究において、怒りの優位性効果については数多くの研究が行われている。

視覚探索課題では、目標となる刺激(ターゲット)の他に、ディストラクタと呼ばれるターゲット以外の妨害刺激を複数提示し、ターゲットを探索させる。このとき、ターゲットの探索が前注意過程において並列的に処理されているなら、探索時間はディストラクタの数に影響されない。この現象はポップアウトと呼ばれる。また、ターゲットとディストラクタを入れ替えたときに、ポップアウトが起こらなくなる現象を探索非対称性と呼ぶ。探索非対称性には、ターゲットの検出の早さだけでなく、ディストラクタを拒否する早さも影響している。

怒りの優位性効果の研究において、怒り顔の探索にはポップアウトが生じなかったこと、探索非対称性が認められたこと、その他探索効率の比較などによって、視覚探索課題における怒りの優位性効果には、怒り顔の検出が早いことと、怒り顔の拒否が遅いことの両方が関係していると考えられている。


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