帰属過程

出来事や人の行動の原因を推論することを原因帰属、または単に帰属と呼ばれる。

内的帰属と外的帰属

フリッツ・ハイダーは、人の行動やその結果は、行為者側と環境側のどちらに原因が帰属されるかによってその意味合いは大きく異なってくるとし、原因の帰属先を内的帰属と外的帰属に分類した。

内的帰属は、観察された事象の原因を行為者側に求める場合であり、行為者の能力や性格などが原因であると帰属される。

外的帰属は、原因を行為者のおかれている状況に求める場合であり、行為者を取り巻く環境や時間的な問題が原因であると帰属される。


帰属のバイアス

対応バイアス

周囲の状況を考慮せず、行為者の内的属性との対応を過大視する傾向を対応バイアス、または根本的な帰属の誤りとも呼ばれる。

対応バイアスは文化によって発生する度合いが異なることも指摘されており、個人主義的な文化の欧米では強く現れるが、集団主義的な文化の日本などでは必ずしも明白なものとはなっていない。

行為者−観察者バイアス

他者に対しては対応バイアスが発生しやすいが、自分の行動に対しては内的属性よりも周囲の状況を過大視する傾向が強い。これは行為者−観察者バイアスと呼ばれ、視点の違いや情報量の違いによって説明されることが多い。

他者の行動に対しては一貫したものとして知覚されやすいこと、他者についての情報が少ないので視界の中心が他者になりやすいこと、見ただけでは状況を判断できない場合が多いことが挙げられる。

一方、自分の行動に対しては、周りの状況を自分なりに理解していること、過去の経験から自分の行動は必ずしも一貫しているわけではなく、状況に左右されることを知っていることなどが挙げられる。

自己奉仕バイアス

自分にとって都合の良い結果は内的属性に、都合の悪い結果は状況に帰属させる傾向を自己奉仕バイアスと呼ぶ。

自己奉仕バイアスは常に表面化するとは限らず、特に日本では「自分の力だけで成功した」とアピールするよりも「周りの人のおかげ」と言っておいたほうが、社会的には許容されやすい。

自己奉仕バイアスは、自尊心を高めるために自分自身に帰属させる自己高揚バイアスと、自尊心の低下を防ぐために状況に帰属させる自己防衛バイアスと個別に呼ばれることもある。

共変モデル

ケリーは「事象の原因はその事象が生じるときに存在し、生じないときには存在しない」という共変原理を適用した共変モデルを提示している。

共変モデルでは、一貫性、弁別性、合意性の3つの情報を基準に帰属される。一貫性とは別の状況でも反応は変わらないか、弁別性とは対象が変わっても同じ反応をするのか、合意性とは他の人もその行為者と同じ反応をするのかである。

これら3つの基準の高低の組み合わせによって帰属先が決定される。すべての基準が高い場合には外的帰属がなされ、弁別性と合意性が低く、一貫性が高い場合には内的帰属がなされる。

因果スキーマモデル

共変モデルでは事前の知識がないことが前提とされているが、実際には事前の知識によって原因帰属が行われることが多いという指摘を受け、ケリーは因果スキーマモデルを提示した。

因果スキーマとは、過去の経験や知識によって因果関係に関する判断枠組みであり、この因果スキーマが適用されることで、少ない情報からでも原因帰属が行える。

因果スキーマモデルでは、特定の事象が生じる原因が複数あるとし、複合必要因果スキーマと複合十分因果スキーマという2つの因果スキーマを想定している。

複合必要因果スキーマでは複数の原因が存在することで結果が生じ、複合十分因果スキーマでは複数の原因のうちどれかひとつが存在していれば結果が生じる。

例えば、行動力と長期的努力が必要であるような困難な課題では、複合必要因果スキーマが適用され、行為者の能力と努力の両方が存在していることが認識され高く評価される。

一方、簡単な課題であれば、行為者の能力か努力のどちらかが存在していれば良いという複合十分因果スキーマが適用され、行為者の能力はそれほど高くは評価されない。このように、ある事象が生じる要因が他にも存在する場合、行為者への評価が低く見積もられる傾向は割引原理と呼ばれる。

割引原理とは逆に、周囲の反対や物理的な障害など、事象の生起を抑制する要因の存在がわかると、行為者の能力や努力は高く評価されやすい。これは割増原理と呼ばれる。

対応推論理論

ジョーンズとデイヴィスは、行動から行為者の性格や態度などの内的属性を推測する対応推論理論を提示した。対応推論理論では、行動が行為者の内的属性をどの程度反映しているのかを対応性という概念を用いて表している。

行為者が選択したある行動に、他の行動にはない特別な効果が多くある場合、行為者の意図を推測することは困難になる。この特別な効果は非共通効果と呼ばれるが、非共通効果の数が多いほど対応性は低いということになる。逆に非共通効果の数が少なければ行為者の意図を推測しやすいので、対応性が高いということになる。

帰属の段階モデル

対応推論理論では、行動から行為者の内的特性を推測する過程を想定していたが、状況によって帰属のされ方が異なることを説明するため、状況に関する情報を含め段階的な処理過程を記述した段階モデルがいくつか現れている。代表的なものとしてギルバートの3段階モデルがある。

このモデルでは、同定、特徴づけ、修正の3段階の処理過程を想定している。まず観察した行動をカテゴリー化によってどのような行動なのかを同定し、それに対応する内的属性によって特徴づける。そして最後に状況を考慮した判断の修正が行われる。

同定と特徴づけの段階は自動的処理過程で、修正の段階は統制的処理過程であると考えられている。統制的処理過程は認知的負荷が高く、情報処理を行う動機づけが必ずしも高くないために省略されやすい。つまり、自動的処理過程だけで帰属が行われることがあり、このような場合に対応バイアスなどの帰属バイアスが発生すると解釈できる。また、統制的処理過程が省略されなくても、認知資源の有無によって修正過程が十分に機能しないこともある。


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