株式会社の仕組み

日本やアメリカの営利法人企業の多くは、株式会社という形態をとっている。他の国々にしても、株式会社制度が法人組織の基本形態として広く使われている。

一般的に、企業規模が拡大してくると、個人の資産や限られた親族の資金だけでは企業活動を維持するのが難しくなる。企業の成長という面からみても何らかの投資が必要になるわけだが、土地や工場、店舗、機械設備などに投入した資金は、通常は数年で回収できるものではない。したがって、企業側は長期にわたって多額の資金を利用できることを望んでいる。

一方で出資者は、全財産を出資金に回すことはせずに、ある程度ゆとりをもって出資するため、出資する金額には限度がある。さらに、出資者は利益がでた時点で速やかに資金を回収したいと考える。

このような、企業と出資者の異なる考え方をうまく解決したのが株式会社という制度である。


株式会社の主な特徴

株式会社は他の営利法人企業と比べると、以下のような特徴がある。

株式会社は、すべての出資者が有限責任しかもたない。出資者は出資額を限度として、それを超える負債に対しては返済の義務はない。

株式会社では、多額の資本を分割し、出資と引き換えに会社の持分を示す証券、株式を発行する資本の証券化が行われる。これによって少額でも出資することができるため、より多くの人からの資金調達が可能となる。また、この証券は第三者に自由に譲渡でき、現代においては株式市場が形成されよりスムーズに売買できるようになっている。株式の売買は、株を発行している企業側からみると名義人の変更にすぎないので、出資金を返却する必要はない。そのため、企業は長期にわたって資金を活用することができる。

株式会社の最高意思決定機関は株主総会である。株主総会は株主が集まり、定款の変更、取締役や監査役の選任及び解任、その他最重要課題の討議・決定を行う。

日本の会社法においては、株主総会と取締役は必要機関とされており、取締役会、監査役、監査役会などは任意設置機関となっている。ただし、会社法における公開会社(株式の一部でも株主総会の決議なく自由に譲渡できる会社)である場合など、特定の条件下では設置義務が生じる。取締役会非設置会社においては、株主総会がこれらの任意設置機関の代替機能を果たすことになる。

株主保護の仕組み

株式会社では、株式を発行し少額の出資金を多数の出資者から集め、その株式は株式市場で流通し自由に譲渡が行われることになる。そのため出資者は企業内部の状態を十分に知ることなく出資をする場合が多い。

会社機関の設置は、株主やその他の利害関係者を保護する仕組みでもあり、株主総会、取締役会、監査役は国家権力の立法、行政、司法の三権分立に例えられることもある。

株主総会

先にも述べたとおり、株主総会は最高意思決定機関であり、株主を構成員として、会社の基本的な方針や重要な事項を決定する。定款の変更、取締役や監査役の選任・解任などもこの株主総会で行われる。

取締役会

株主総会で選任された取締役で構成され、業務執行に関する重要事項の意思決定を行う。取締役会で議決されるものの中には、代表取締役の選任・解任、株主総会の招集、新株の発行や株式の分割などもある。

監査役

監査役は株主総会で選出され、株主に代わって帳簿書類の調査を行い財務諸表の監査を行う会計監査と、会計以外の業務の進め方や組織のあり方などを合法性と合理性の観点から調査検討する業務監査を行う。

株式会社の問題点

株式会社制度は、日本や欧米だけではなく世界中の国々で法人組織の基本形態として広く使われている。その主な理由は、設立が容易であり柔軟性が高いこと、資金調達が容易であること、企業内部の権力関係を明確化できることなどが挙げられる。

しかし、株式会社制度にもいくつかの問題点はある。株式会社制度成立の初期の頃から、出資者である株主と経営者との間に利害の対立が生じる可能性については常に問題とされてきた。出資者ではない経営者の怠慢、資金の無駄遣い、株主に対する情報の非開示などである。これらの問題点を解決するために、会計制度や監査制度などさまざまな制度によって、上述したような株主を保護するための仕組みが作られてきたわけである。

しかし、株主を保護する仕組みについては形骸化されている面もある。例えば、株主総会での議決は1人1票ではなく1株1票であるため、大株主に有利な仕組みになっている。これはこれで公平ではあるが、小口の株主は株主総会に出席せずに委任状を送付するだけで済ます場合も多くなり、その結果、株主総会が企業にとっての重要議題を報告し承認されるだけの機関になってしまっている場合もある。取締役や監査役を決める株主総会が形骸化すれば、取締役会や監査役も形骸化する可能性も高い。

資金調達

株式会社の基本的な資金調達の源泉は、株主からの出資、負債、利益の留保の3つである。

これまでにも見てきたとおり、株主からの出資は返済する必要がないため、長期的な運用には向いている。出資者は企業の形態によって特定の個人だけに限られる場合もあれば、不特定多数の場合もある。

負債による調達は主に、金融機関からの借り入れ、社債の発行、企業間信用における取引相手からの調達がある。金融機関からの借り入れは、銀行が預金者の資金を企業に貸し出していることから間接金融と呼ばれている。これに対し、株式や社債の発行など資本市場を通じて資金の出し手から直接的に調達することは、直接金融と呼ばれる。

利益の留保とは、企業活動で得られた利益のうち、税金や配当などを支払った後に企業に残る資金である。これは内部金融とも呼ばれる。

所有と経営の分離

一般的に、株式会社では企業規模が拡大すると株主が企業を支配する力が失われ、経営者が支配力を強めることになる。その理由として、株式の分散と経営の複雑化という2つの考え方がある。

経営者支配論

バーリとミーンズは、1929年にアメリカの代表的な企業最大200社を調査し、筆頭株主の所有比率をもとに支配形態を分類した。その結果、筆頭株主の所有比率が20%未満の企業がおよそ44%であった。これを所有に基づかない支配として注目し、筆頭株主を含む多くの株主は企業支配の意思がなく、株主の意向が経営に反映されていないと考えた。バーリとミーンズは、このような状態を経営者支配と呼んでいる。

このような結果からバーリとミーンズは、企業規模が拡大すると、株式の所有者が増大することによって株式が分散され、ひとりで支配できるほどの大株主がいなくなったとしている。その結果、所有と支配の分離が進み、所有者に代わって経営を専門的に担当する専門経営者が登場することになる。このような流れで経営者の支配力が強化されることは経営者支配論と呼ばれている。

経営者革命論

これに対して、ジェームズ・バーナムは株式の分散だけでは経営者支配は生まれないとしている。企業規模が拡大すると経営環境が複雑化し、それに対応するために、経営者に専門的な知識や能力が必要となることによって専門経営者が登場すると考えたのである。このような流れで経営者の支配力が強化されることは経営者革命論と呼ばれている。


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