集団とは
集団とは、複数の人々からなる社会的なまとまりのことで、会社や学校などの組織化された集団や同じ趣味を持つ人々が集まった集団など、その形態はさまざまであるが、共通しているのは相互作用と相互依存関係が主になっていることである。ただ、集団の明確な定義というものはなく、一般的には下記条件のいくつかにあてはまる2人以上の集まりを集団と考えることができる。
- 直接、または間接的に互いに影響を与え合う、または与え合う可能性がある
- 互いの関係が安定しており、ある期間継続される
- 互いがいくつかの目標を共有している
- それぞれの地位や役割がはっきりしている
- 自分自身がその集団に所属していると自覚している
集団のつくられ方
集団のつくられ方には、計画的形成、外部的規定での形成、自発的形成の3つの種類がある。
計画的形成による集団とは、何らかの社会的目標を達成するためにつくられた集団で、計画的にそれぞれの地位や役割が与えられる。このような集団はフォーマルグループとも呼ばれる。
外部規定での形成による集団とは、年齢や職業、宗教、居住区など、同じような特徴を持った人同士として扱われることでできる集団である。
自発的形成による集団とは、互いが一緒にいることで満足を得られるという期待をして集まった集団である。友人や同じ趣味を持つ人々が集まってできた集団は自発的形成による集団である。このような集団はインフォーマルグループと呼ばれる。
集団に所属する理由
人が集団に所属するのは下記の5つの理由があると考えられている。
- 他の人々から好意を得たい、注目されたいなどの心理的な要求を満たすため
- ひとりでは成し遂げられない目標を達成するため
- 個人では入手できない情報を入手するため
- 自分の精神的、身体的あるいは経済的な安全を守るため
- 肯定的な自己評価を得るため
集団の構造化と役割の形成
集団は、意図してつくられ成員に明示的な役割や地位が与えられたとしても、これらは不変的なものではなく、相互作用を通じてさまざまに変化する。例えば、積極的に集団を引っ張って貢献しようとする人もいれば、あまり積極的ではないが特定の仕事に高い能力を発揮する人もいる。このような各成員の行動の集積によって、周囲から期待される行動が成員によって異なるようになり、役割が分化し組織化される。本来は役割自体に優劣はないわけだが、役割の分化に伴って地位が形成されることもあり、それが集団内に浸透していく。
一般的に、集団がつくられた初期に生じる構造化のひとつに、集団内にリーダーとリーダーに従うフォロアーという関係性が生じる。さらに成員が増え集団が大きくなると、集団内にいくつかの小さな集団が形成され、その中でもリーダーあるいはサブリーダーといった役割が与えられる人がいる。企業組織でいえば中間管理職のような存在で、この人たちはリーダーであると同時にフォロアーでもあるため、この2つの役割を同時にこなす必要がある。その結果、上司と部下の板ばさみとなり役割葛藤のストレスを経験することになる。
集団凝集性
個人を集団に留まらせるように働く力は集団凝集性と呼ばれる。凝集性の高い集団は、団結力が高く互いが協力し合う傾向が強く、目標達成に向けてプラスに働くことが多い。ただし、過度に凝集性が高いと内部統制がおろそかになったり、自分を集団の一員として見る集団同一視の傾向が強くなり、自分の集団に対してひいきする傾向がある。その結果、集団は閉鎖的になり、外部との関係性が悪くなる可能性もある。
集団凝集性には、集団内の人間が互いに好意を持つことにより生じる対人的凝集性と、その集団に所属することで自分の目標を達成できることにより生じる課題達成的凝集性がある。これらは個人が集団に求めるものと、その集団の特性によって変わってくる。一般的に、会社のようなフォーマルグループでは課題達成が要求されるのに対して、同じ趣味をもつ人が集まってできるようなインフォーマルグループでは課題を達成するということはあまり要求されないだろう。
ただし、対人魅力が凝集性を高めることに関しては否定的な意見もある。おそらく、成員が2、3人の集団であれば対人魅力が凝集性を高めることになるのかもしれないが、それより大きな集団になると、対人というよりは総合的な人間関係の構造が魅力的かどうかが凝集性に影響するのではないかと考えられる。
集団規範
集団内で共有される判断の枠組みや行動様式などは集団規範と呼ばれる。集団規範には校則や社訓などのように明文化されているものや、暗黙のうちに共有されているものもある。一般的に、凝集性が高い集団ほど、集団規範が及ぼす影響は大きくなる。
集団実体性
私たちは人の集まりを集団として捉えるとき、必ずしも成員間の相互関係を意識しているとは限らない。例えば、野球やサッカーなどのスポーツ観戦に来ている人々が同じユニフォームを着ていれば、その人々の間に直接の相互関係がなくてもそのチームを応援する集団として捉えることができる。
このように、集団としてまとまりがあると認知される程度を表したものを集団実体性と呼ぶ。キャンベルは「同じ要素でも、それがおかれた文脈や全体像によって異なる意味をもつようになる」というゲシュタルト心理学の考え方を、人間の集合についても当てはめられると考えた。具体的には、類似性や近接性が高い対象の間にはまとまりが知覚されやすい。また、集団の境界を越えることが難しい閉合性の高い集団や、同時に動いたり、同じ結末に至るもの同士も、まとまりが知覚されやすい。
- 『社会心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2010)
- 『Social Psychology: Goals in Interaction (6th Edition)』 Pearson(2014)
- 『心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2004)