情報の伝播

集合行動が発生する過程のひとつに情報の伝播が挙げられる。ここでは、集合体にどのように情報が普及していくのかをみていく。


流言

流言とは、明確な根拠のないままに広まる噂のことで、「デマ」との違いは意図的な嘘ではないということである。

オルポートらは、流言の流布量が当事者にとっての問題の重要性と状況のあいまいさとの積に比例するという公式を提示した。その後の研究によると、特に重要なのは「不安」「あいまいさ」「信用度」の3要因であるという。これは、伝わっていく言葉が変化することによって伝わる内容も変化していく伝言ゲームのような考え方とは異なるものである。

災害などの緊急事態において、情報チャネルが遮断され、あいまいな状況の中で人々の不安が高まることによって、数少ない情報がそのあいまいさを埋めるために使われる。つまり、流言とは状況の定義づけにほかならない。

流言が伝播するプロセスを追った数少ない研究として、1973年に起こった豊川信用金庫事件がある。この事件は、女子高校生の会話に端を発し噂が広まった結果、豊川信用金庫が倒産するという誤情報が流れ、大規模な取り付け騒ぎにまで発展している。

情報のカスケード

カスケードとは階段状の滝を意味する言葉で、情報のカスケードは、各々の意思決定者が先行する他者の行動から情報を得て、それに追随した行動をとることによって生じる集合行動の連鎖モデルである。

このモデルは、株式などの投資市場の動きを説明するのにも用いられることがある。ここでは「他者1人の行動 < 自分がもつ情報 < 他者2人以上の行動」「行動の選択肢は売りと買いの2つ」を前提として話を進める。

最初に行動を起こす投資家Aは、先行する他者の行動をみることはないので、自分のもつ情報にそのまま従う。2番目の投資家Bは、投資家Aの行動から情報を得ることはできるが、それが自分の情報と一致している場合も一致していない場合も自分のもつ情報に従う。3番目の投資家Cは、投資家AとBの行動が異なっている場合には、自分のもつ情報に従うことになるが、一致している場合には先行する2人と同じ行動をとることになる。ここで、3人の投資家A、B、Cの行動は3人共一致しているか、2対1に分かれるかの2つになる。すると、4番目以降の投資家は自分のもつ情報にかかわらず必ず多数派に従うことになり、市場の高騰・暴落といったことが起こる。

実際には、市場の高騰や暴落がそれほど頻繁に起きているわけではない。ここで示した前提条件は個々人によって異なるだろうし、上述した流言でもみたように不安やあいまいさ、信用度といった状況要因も少なからず関係している。ただしこれは、状況さえ整えばこのモデルのようなことが起こるということを意味している。


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