世論の形成

社会的な争点が公的な注目を浴びると、世論の形成過程が進行していく。その中で、一方の立場の意見が多数派となることがある。多数派となった意見は公共的な意見として、多数派であることを前提として人々はふるまい始める。これは「社会的に認められた意見だから正しいに違いない」という多数派やコンセンサスに基づいたヒューリスティックの使用につながる。


沈黙の螺旋理論

多数派形成の理論として、ノエル−ノイマンによって提唱された沈黙の螺旋理論がある。

少数派であると認識する人々に比べ、多数派であると認識する人々はより自信をもって意見を主張するため説得力を持つ。そして少数派であると認識する人々は孤立することを恐れ沈黙しがちになり、多数派であると認識する人々の意見だけが聞こえるようになる。この過程が繰り返されることによって、最初はわずかな差しかなかったものが、時間経過とともに大きな差になり、多数派形成が進むというものである。

この理論は、さまざまな観点からの批判はあるものの、複雑な社会課程を同調行動とヒューリスティックという基本的なものによって説明しようとしている点は評価されるべきである。

少数派の謎

上記のような理論に基づくならば、世論の形成過程は多数派の形成過程と同義であるといえる。この多数派の形成過程が進んでいけば、やがて多数派のみの世界となり少数派は消滅することが予想できる。しかし現実をみると、多くの場合に少数派が存在し、長期にわたって残存し続ける。

安野の研究によれば、少数派の人々は相互に自分たちの立場を強化し合い、外部から影響を受けつけようとしにくいという。しかも自分たちが少数派であることを認識していないという。

少数派の意見を持つ人々でコミュニティーが形成されれば、そのコミュニティーの中ではその意見が多数派であるということになる。全体としての世論形成過程の中にも、特定の集団における世論形成過程が存在しているという2重の過程が生じていると安野は指摘している。

歴史をみれば、少数派が多数派へと発展する事例は存在しているが、世論の形成過程として多数派への発展過程を明確に示した理論は今のところ存在していないようである。


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