キャパシティ拡大

キャパシティの拡大は、多くの企業や業界において戦略上の重大な決定事項となる。例えば、新しく工場をつくるには多額の資金と年単位の時間が必要になるし、業界の変化によって供給量が需要量を上回ったとしても、簡単に規模を縮小するようなことはできないからである。

キャパシティを増やす方法は、大きく分けると2つある。1つは人や設備などの数を増やす方法で、2つ目は生産方法を変えたり新技術を導入することによって、1製品当たりにかかる時間を短くするという質を高める方法である。

2つ目の方法については「技術開発」のページで記述することになるので、このページでは数を増やすキャパシティ拡大についてみていく。


キャパシティ拡大を決定する構成要素

一般的に、投資の決定を行うには、投資によって将来の収入がどうなっていくのかや、投資額をどの程度の期間で回収できるのかなどを試算する。この試算の中には、業界が成長しているのか停滞しているのか、あるいは後退しているのかということも含まれている。投資可能な対象のいくつかを候補としてあげ、そのすべてで試算を行い、もっとも投資効率の良いものを投資先として決定することになる。

こうした単純な財務分析では、技術動向や競争業者の動きなど不確実な要素が組み込まれることは少ない。しかし、新技術の登場によって拡大した設備が陳腐化したり、複数の競争業者の投資によって供給過剰になれば、当然収益にも影響を与えることになる。

もし、業界全体の生産能力が需要量を満たせていないなら、他の競争業者も設備の拡大を行う可能性は高い。その中で設備拡大を行った場合、業界全体の生産能力や業界内のシェアはどうなるのかを考慮しなければならない。

将来についての需要や競争業者の動きは不確実性が高いため、多くの業者は将来の見通しがより確実になるまで設備投資は控える。そして、需要量がある程度見通せるようになると、次々と設備投資の決定が行われることになるが、決定が遅れると設備投資のタイミングを逃すことになる。

キャパシティ過剰になる原因

規模の経済の効果が大きい

規模の経済の効果が大きな業界では効果が小さい業界と比べ、早い時期に生産規模を拡大した企業がコスト面で有利になるわけだから、需要に不透明感があっても積極的に設備投資を行おうとするため、キャパシティ過剰になりやすい。

設備の拡大に時間がかかる

投資を決めてから稼働するまでに長い期間を要する場合、企業ははるか先の需要量と競争業者の動向を予測しなければならない。需要が増大してから投資を決めても利益機会を逃すことになるので、多少の不透明感やリスクがあっても投資に踏み切る可能性が高くなる。

撤退障壁が高い

新しい技術を使った効率的な設備などがあらわれると、競争に負けないようにとそちらに切り替えようとする動きが出てくる。ここで、これまで使ってきた設備を撤去するのに多額の費用がかかる場合や、撤去せずに並行してそのまま操業を続けるほうが利益が高い場合は、需要量と供給量のバランスを保つような形で撤去される可能性は少なくなる。

信頼できるリーダー企業がない

業界内の多くの業者がリーダー企業になろうと競り合っている場合、無秩序な設備拡大が行われる可能性がある。逆に、強力な力を持つリーダー企業がいると、業界全体の調和のとれた拡大をはかる力が働き、需給のバランスを崩すような設備拡大を行う企業に対して適切な報復を行うことができる。

参入障壁が低い

参入障壁が低いと、簡単に業界の外の業者が参入できることになるため、キャパシティ過剰になりやすい。特に、景気が良いときに参入業者が増え利益を奪われることになるので、深刻な問題につながりやすい。

将来への過大な期待

証券会社や金融機関、投資家などによる将来への過大な期待感によって企業側は楽観的になりやすく、設備投資なども過大になりやすい。

設備を拡大しない場合の相対的な損失が大きい

各社が一斉に設備を拡大しても、需要が想定していたよりも伸びなかった場合は損をすることもあるし、自社だけが設備を拡大しなかったために、需要に対応できずに損をすることもある。しかし、業界内のすべての企業が損をするよりも自社だけが損をするほうが、他の企業と比較すると損益の差は大きくなる。これは損益だけではなく、市場シェアや業界での地位、規模の経済の効果が大きいならばコストにも影響する。そのため、自社だけが設備を拡大しないという選択はリスクが高いのである。


参考書籍
おすすめの実用書
経営学カテゴリー
経営戦略論
トップメニュー
物理学