態度

人間の行動の背景には、対象への感情や評価的な判断に基づいた心理的な傾向がある。これを態度と呼ぶ。態度には、言動や立場、目に見える行動から推測される「肯定-否定」「接近-回避」などの意味も含まれているが、その根幹にあるのは「好き-嫌い」あるいは「快-不快」という感情的な成分である。


態度の形成

態度にはいくつかの発生源が想定されているが、その形成過程のひとつに学習理論を用いた説明がある。その中でも重要なものとして古典的条件づけとオペラント条件づけ、観察学習がある。

古典的条件づけ

古典的条件づけには「パブロフの犬」で有名な実験がある。犬にメトロノームの音を聞かせた後、えさを与える。犬はえさを食べる際に唾液を出す。これを繰り返すと、えさを与えなくてもメトロノームの音を聞いただけで唾液を出すという結果が得られる。条件づけされる以前は、メトロノームの音は何らかの反射を伴う刺激ではない。このような刺激は中性刺激と呼ばれるが、「メトロノームの音」と「唾液を出す」という反応が結びつけられることによって、中性刺激であるメトロノームの音が生理的な反応を伴う刺激へと変わるのである。

犬にとってえさを食べることは「快」であるが、メトロノームの音にこの快感情の予期が付与されたとも解釈できる。このような条件づけは私たちの日常生活においても多く見られる。例えば商品の広告に、好感度が高く人気のある有名人を一緒に登場させることによって、好ましいという感情と商品が条件づけされるといったことなどである。

このように、私たちはまったく関連のないものでも一緒に呈示されると、感情的に結びつけてしまう傾向がある。「好きになれるかもしれない」「なんとなく嫌い」といった態度の形成過程は、古典的条件づけによって説明することができる。

オペラント条件づけ

オペラント条件づけは、行動した後に好ましい結果が得られればその行動の頻度は増し、好ましくない結果が得られればその行動の頻度は減少する、という行動と行動の結果との結びつきである。例えば、テストで良い点数を取ったことで親や友人、教師に褒められれば、次のテストでも良い点数を取るために勉強時間は増加するかもしれないが、周りから大した反応が得られなければ勉強時間は減少するかもしれない。

このように、ものごとに対する態度は過去に行った行動の結果からも影響を受ける。同じ行動をとっても結果が異なれば、態度も変わってくるのである。また、何が好ましい結果になるのかは解釈の仕方によっても異なる。例えば、勉強することで「わからなかったものが理解できるようになる」ことを好ましい結果として捉えていれば、周りからの反応がなくても勉強時間は減少しないであろう。この「好ましい結果」もまた、古典的条件づけによって説明できる。

観察学習

好ましい結果あるいは好ましくない結果が得られる行動を学習するのに、実際の行動が必要になるとは限らない。他人の行動を観察することで学習することもできる。他人が褒められているのを見れば、その人がとった行動や態度を進んで取ろうとするし、叱られているのを見れば、その人がとった行動や態度は避けるようになる。例えば、犬が苦手な子どもに、他の子どもたちが犬と楽しく遊んでいる映像を見せるだけで、犬に対してずっと肯定的な態度を示すようになった研究もある。

オペラント条件づけや観察学習は、社会的な行動規範を学ぶ過程である社会化と類似している。ある集団内の人達の態度や行動が似てくるのも、このような学習過程が背景にあると考えることができる。

遺伝的要素

経験が態度の形成に大きな影響を与えていることは間違いないが、最近では学習によらない遺伝的要素もあることが示されている。テッサーの研究によると、遺伝的に影響された態度は社会生活において特に強い影響力を持つとされている。

遺伝に関する実証的研究はまだ始まったばかりであるため、ここでの言及は避ける。

態度の強さ

態度には、長期間にわたって安定しているものと、外部からの説得によって簡単に変わってしまうものとがある。心理学で態度に注目する理由のひとつは、正確な行動予測につながると考えられているからであるが、簡単に変わってしまう弱い態度をもつ場合は、行動を予測することは難しい。

態度の強さが何によって決まるのかについてはいくつか理由が考えられているが、そのひとつにコミットメント(関与)がある。コミットメントが高いということは、過去に多くの時間や労力、認知資源を消費していることが多いため、自己概念や社会的アイデンティティーとの結びつきが強い。従って、それが正しいという確信の度合いが強くなり、確証バイアスも生じやすいため、変化しにくい強い態度が形成される。


参考書籍
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