確証バイアス
人間は自分の考えが正しいか否かを検証する際に、自分の考えを証明する証拠ばかりを探してしまい、反証情報に注目しない傾向が強い。これを確証バイアスと呼ぶ。ある情報が入ってきた場合、その情報と合致する事例が見つかることによって、その情報は正しいと証明されたような気持ちになりやすい。しかし、これは証明を指示する情報が見つかったと言うだけで、反証を指示する情報の方が多い可能性は十分にあり得るのである。
確証バイアスの一般的な事例として、血液型と性格の関係がある。人の性格はひとつに決定されるものではなく、通常は様々な特徴を含んでいるものである。しかし、相手の血液型がA型だとわかると、A型の性格として知られている几帳面などの特徴ばかりが目についてしまい、「A型は几帳面である」という情報が正しいものであると認識してしまうのである。
確証バイアスは当然、科学者にも働く。科学者は確証バイアスを回避するために反証情報に注目するという手段をとっている。この方法は普段の生活の中でも有効で、ある情報が正しいかどうかを確認する場合には、反証情報を先に調べればよいのである。証明する情報を調べるのはその後でも遅くはない。
肯定的検証方略
確証バイアスは単独のバイアスというよりは、いくつかのバイアスの総称として用いられることが多い。その中のひとつに仮説の検証過程におけるバイアスがある。
人は、ある仮説が正しいかどうかを他者に確かめるとき、その仮説が正しければ肯定的な回答が返ってくるような質問をしてしまうことが多い。これは肯定的検証方略と呼ばれる。人の性格的な特徴でいえば、人は大雑把と几帳面の2つ分かれるわけではなく、多くの人は両方の特徴を持っているはずである。「あなたは大雑把ですか?」と聞かれれば、自分の大雑把な面を思い浮かべ「はい」と肯定的な回答をしてしまう可能性が高い。逆に「あなたは几帳面ですか?」と聞かれれば、自分の几帳面な部分を探してしまうため、こちらも肯定的な回答をしてしまう可能性が高いと言うわけである。
- 『社会心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2010)
- 『Social Psychology: Goals in Interaction (6th Edition)』 Pearson(2014)
- 『認知心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2010)
- 『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』 早川書房(2014)