ステレオタイプ

集団やカテゴリーに属する人たちに対して、人々が持っているイメージなどのことをステレオタイプと呼ぶ。ステレオタイプには肯定的なものから、偏見や差別につながる否定的な内容のものも多い。従来の社会心理学では偏見や差別などの内容を把握することに重点がおかれていたが、近年ではステレオタイプの認知的メカニズムの解明に重点がおかれている。

ステレオタイプとは集団に対して形成された印象にほかならないわけだが、「印象形成」のページでも示した通り、集団の印象は個人に対する印象形成にも影響を与える。

どのような場合にステレオタイプが適用されるのかについては、認知資源の有無や回避しようとする動機、自己評価への影響、感情の状態などが考えられている。

※ステレオタイプの形成・維持・変容などについては「ステレオタイプ | 認知心理学」を参照して欲しい。


認知資源有無

他者についての印象を形成する場合、相手の特徴に注意を向けて解釈し、その情報を基に判断することになるため、多くの認知資源を使わなければならない。こうした観点から、認知的負荷の大きい状況では、より効率的に印象を形成できるステレオタイプが適用されやすいのではないかと考えられており、実際にいくつもの研究で実証されている。

ステレオタイプを回避しようとする動機

偏見や差別などは望ましくないという強い規範が存在するので、それに気づいた場合はステレオタイプの適用を避けようとするのではないかと考えられる。実際の研究でも、参加者に偏見をもっていることを気づかせると、ステレオタイプが抑制されることがわかっている。

ただし、ステレオタイプの適用を回避し抑制し続けると、逆にステレオタイプ的な反応が大きくなってしまうことがあり、これはリバウンド効果と呼ばれる。ステレオタイプを回避することに認知資源を使用したため、その後の判断でステレオタイプが適用されやすくなったと考えることができる。

偏見や差別はよくないという指導だけでは、一時的な効果しか期待できないことがわかる。

自己評価の維持

シンクレアとクンダの研究では、大学生の成績とその成績をつけた男性教員または女性教員に対する大学生の評価について検討した。男性教員に対する評価は学生の成績によって違いがみられなかったのに対して、女性教員に対する評価は、成績の悪い学生ほど低い傾向にあった。

これは男性教員に対する評価に違いがなかったことから、男性よりも女性の方が能力が低いというステレオタイプが適用されたと解釈できる。つまり、自分の成績が悪かった原因を外的要因に帰属させて、自己評価を維持するためにステレオタイプが適用されたと考えられる。

このような傾向は個人だけではなく集団間の関係においてもみられる。良い結果は自分の所属する内集団に原因を帰属させ、悪い結果は外集団に原因を帰属させようとする。これは内集団バイアスと呼ばれるが、これも自分の所属する集団の評価を維持するために、外集団の成員よりも内集団の成員の方が優れているというステレオタイプが適用されている。

感情の状態

ポジティブな気分のときはネガティブな気分のときよりもステレオタイプが適用されやすくなることは「気分が与える影響」のページの中でも触れた。ポジティブな気分というのは現状に問題がないと解釈されるため、ネガティブな気分のときと比べ分析的思考が行われにくいのである。

では、情動の場合はどうだろうか。認知資源という観点から見ると、意識できる激しい感情である情動は、利用できる認知資源の量を減らすため分析的思考が抑制され、ステレオタイプが適用されやすくなることが予想できる。これはいくつかの研究をみると、すべての情動においてではないが、怒りや過度の不安ではステレオタイプ的反応が促進されるようである。ワーキングメモリの研究でも、強い情動反応がワーキングメモリを阻害し、認知的なパフォーマンスを低下させることがわかっており、強い情動によって認知資源が使用されるためにステレオタイプが適用されやすくなると考えられる。

ただし、情動とは関係のない運動後の生理的覚醒状態においても、ステレオタイプが適用されやすくなるという研究もある。強い情動が生理的覚醒をもたらすことを考えれば、生理的覚醒状態がステレオタイプ的反応を促進させていると考えることもできる。

判断対象の情報

他者の印象を形成するのに、相手の情報が少なければ集団としての情報を使わざるを得ないため、ステレオタイプが適用されやすくなることが予想される。このような観点から、集団間の接触回数を増やせば相手の情報が増えるため、偏見や差別はなくなるはずだ、という考え方は接触仮説と呼ばれる。しかし実際の研究では、敵対する集団を近づけると、かえって関係性が悪化する場合もあるなど、単純に情報量が増えればステレオタイプが抑制されるわけではないことがわかっている。

接触仮説が成り立つためには、集団間が協力的関係にあること、接触する成員同士が地位的に対等であること、そして反ステレオタイプ的情報が得られることなどが挙げられている。


参考書籍
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