固定的動作パターンと生得的反応連鎖
無条件反射や向性などは比較的単純な行動であるが、生得的行動の中には規則正しい一連の異なる運動で構成される系列的行動もある。
固定的動作パターン
誘発刺激が呈示されると決まった順序で最後まで行われる運動は固定的動作パターンと呼ばれる。これは種に固有であり、学習によって得られたものではなく生得的な行動であることが分かっている。また、一度開始されるとそのパターンが完了するまで続けられる。広い意味では無条件反射も固定的動作パターンの一種であるといえる。
固定的動作パターンの例としてよく挙げられるものに、トゲウオの防衛反応がある。オスのトゲウオは発情期の間、なわばりに他のオスが侵入してこようとすると威嚇行動を示す。オスのトゲウオの下腹部には赤い斑点があり、これが誘発刺激となっている。メスの場合は赤い斑点を持たないため、なわばりへの侵入が許される。
生得的反応連鎖
生得的反応連鎖も系列的行動であるが、固定的動作パターンとの違いはひとつの行動が完了すると次の刺激が存在しないと行動が連鎖しないことである。系列の途中で行動が終了することもあれば、適切な状況での刺激であれば系列の途中から行動が開始されることもある。
先ほどのトゲウオの例で見ると、発情期のオスのトゲウオにメスのトゲウオが近づくと、ジグザグダンスと呼ばれる求愛行動を示す。その後にメスを巣に引き入れる行動が行われるが、途中でメスが逃げてしまうとこれらの行動は最後まで行われずに終了する。
参考書籍
- 『メイザーの学習と行動 日本語版第3版』 二瓶社(2008)
- 『学習の心理―行動のメカニズムを探る (コンパクト新心理学ライブラリ)』 サイエンス社(2000)
- 『グラフィック学習心理学―行動と認知 (Graphic text book)』 サイエンス社(2001)
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