記憶と学習
学習とは「経験による行動の永続的な変化」と定義されることが多い。一時的な変化ではなく永続的な変化である。これは経験によって得られた情報を保持し、必要なときにその情報を取り出せる記憶過程を必要とすることになる。条件づけや社会的学習、運動技能学習では記憶についてはあまりふれていないが、どれも記憶過程を要するのは明らかである。
記憶の実験的研究を初めて行ったのはヘルマン・エビングハウス(19世紀後半)であると言われているが、記憶自体に焦点が合わせられ研究が活発化しだしたのは認知心理学によるところが大きい(1960年代以降)。認知心理学は主に人間を対象として行われてきたが、その研究結果を動物に適用する動物認知や比較認知などの領域が開かれ、様々な動物間で認知過程を比較し共通性を見出そうとする試みも行われている。
ここでは学習という観点から、主に比較認知による記憶についての研究を掲載する。認知心理学の理論については「認知心理学」を参照してほしい。
長期記憶と短期記憶
現在の記憶研究の一般的な見解として、長期記憶と短期記憶の区別が重要視されている。長期記憶は、文字通り何ヶ月や何年も保持されるような長期的な記憶で、非常に大きな容量を持っている。短期記憶はごく短い期間しか保持されず、わずかな容量しかないと考えられている。ヒトの短期記憶の場合はマジカルナンバーと呼ばれる7±2という容量が知られている。
近年では短期記憶は作業記憶(ワーキングメモリ)という用語に置き換えられて使われるようになっている。それは短期記憶が単純な記憶機能だけではなく、いくつかの処理機能も行っていると考えられているからである。また長期記憶は、ワーキングメモリが参照情報として使用することから参照記憶と呼ばれることもある。
参考書籍(PR)
- 『メイザーの学習と行動 日本語版第3版』 二瓶社(2008)
- 『学習の心理―行動のメカニズムを探る (コンパクト新心理学ライブラリ)』 サイエンス社(2000)
- 『グラフィック学習心理学―行動と認知 (Graphic text book)』 サイエンス社(2001)
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