模倣

古典的条件づけやオペラント条件づけでは、強化される前の初期の行動がどのように生起するのかについては迷信行動や刺激般化などで説明されるが、ヒトや動物の行動を観察すれば明らかにそれとは異なる生起の仕方をしているようにみえるものもある。その中の一つに模倣行動がある。

模倣行動が生得的なものなのか学習性のものなのかという議論は、20世紀初期の段階から行われていた。また、20世紀後半に行われたメルツォフとムーアの新生児模倣の研究で生得的なものであることが確定的だと思われたが、いくつかの問題点も指摘されている。(メルツォフとムーアの研究については「新生児模倣|認知心理学」を参照)


オペラント反応としての模倣

ミラーとダラートは様々な実験から、模倣行動はオペラント条件づけの特殊な例であり、学習性のものであるとしている。中でもネズミを使った模倣学習の実験が有名である。

まっすぐ進むと突き当り、左右に道が分岐している高架式T迷路と呼ばれる装置を使用して、分岐点の先には手がかりとなる白と黒カードがランダムに配置し、どちらに行けば餌にありつけるかを知っているリーダーネズミと、それに続くフォロワーネズミを観察した。フォロワーネズミは、リーダーと同じ行動つまり模倣した場合に餌を与える群と、模倣しない場合に餌を与える群に分けている。その結果、模倣した場合に餌を与えた群は模倣頻度が増加し、模倣しなかった場合に餌を与えた群は模倣頻度が減少した。

人間の子どもについても似たような実験が行われており、同様の結果が得られている。ミラーとダラートは、模倣することが強化されれば模倣が生じ、模倣しないことが強化されれば模倣は生じないと結論し、模倣はオペラント反応であると示している。

般化模倣

ミラーとダラートの実験は、模倣が強化されることを示してはいるが、最初の模倣がどのように生起するのかは示していない。日常生活を見ても、強化されない模倣行動の方が多いように思える。

これに対してベアとシャーマンらは、模倣に般化の概念を導入した。模倣対象となっているモデルが同じであれば、いくつかの模倣が強化されると、他の種類の模倣も強化されることを実験によって示したのである。これは般化模倣と呼ばれている。

般化模倣は人間の一部の模倣行動をよく説明できるように思える。例えば、親や尊敬する人物の行動はよく真似するが、それほど尊敬していない人物の行動はあまり真似しない傾向がある。また、子どもがアニメのヒーローを真似するのは、親や友達と楽しい時間を過ごせることが強化子となっていると考えることもできる。

模倣に影響を与える要因

強化以外でも模倣の生じやすさに影響を与える要因は多く示されているが、その中でも代表的なものを取り上げる。

優位性

子どもが両親の行動を模倣しやすいというのは容易に想像できるが、ミシェルとグリュセックは、両親が子どもにとって影響力をもっているからではないかと考え以下のような実験を行った。

幼稚園児たちにある女性を紹介し、新しい先生となるので今後頻繁に会うということを強調し、別の幼稚園児たちにも同じ女性を紹介したが、再び会うことはないだろうと紹介した。その後、その女性と子どもたちは一緒にゲームを行い、女性がいなくなった後の子どもたちの行動を観察した。その結果、今後頻繁に会うだろうと紹介された子どもたちは、そうでない子どもたちと比べて、その女性の行動を多く模倣している。

この実験だけを見ると、単純な影響力というよりは影響力をもつであろうという予期、あるいは先生という優位性が影響力を与えていると解釈できる。他の研究においても、先生だけではなく子どもたちの中で高いパフォーマンスを示す子どもは模倣の対象となりやすいことが分かっており、社会的グループの中でなんらかの優位性をもっていると模倣されやすいことがわかる。

モデルと学習者の類似性

模倣が生じやすいかどうかはモデルと学習者の類似性も挙げられる。子ども場合は同性、同年齢、同じことへ関心を示す子どもをより多く模倣しやすいことが様々な実験から示されている。


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