反射と向性

ヒトや動物の行動は、遺伝などの先天的要因である生得的行動と、経験などの後天的要因である習得的行動がある。生得的行動の種類は動物の種によって異なるが、同じ種の動物であればほぼ等しい。

学習心理学での研究対象は習得的行動であるが、生得的行動を知っておかなければどれが学習によって得られた行動なのかを見極めることができない。また、学習行動の多くは生得的行動の延長か派生したものであるため、学習を理解するには必須の知識である。


反射

手で熱いものを触れば瞬間的に手を引っ込めたり、口にものを含めば唾液が分泌される。これらは意識して起こる行動でも学習よって起こる行動でもなく生得的なものである。このような、適切な刺激に対して確実に誘発される身体の一部の定型的運動は無条件反射、あるいは単に反射と呼ばれる。

無条件反射は種に固有で、ヒトの場合は以下のような無条件反射があり、乳児のみに見られるものもある。

名称刺激反応
眼瞼反射強い光、ほこりなどまばたき
瞳孔反射明るさの変化瞳孔の大きさの変化
唾液反射口中のもの唾液分泌
膝蓋腱反射膝下への打撃脚のはね上げ
屈曲反射手や足への侵害刺激手や足のひっこめ
排尿反射膀胱圧排尿
把握反射手のひらへの圧刺激把握
モロー反射大きな音、強い光抱きつき
吸啜反射唇や頬への触刺激吸う
バビンスキー反射足裏の外側への刺激足親指の屈曲

向性

光によって活動が活発化したり、光から逃れようとする動物もいる。このような行動は向性と呼ばれ、反射が身体の一部の定型的運動であるのに対し、向性は身体全体の定位運動である。無脊椎動物や魚など比較的単純な動物に見られる生得的行動である。

向性は走性と動性の2つに分類することができる。

走性

ある刺激に向かっていったり、逆に刺激から逃れようとするような方向性のある運動は走性と呼ばれる。また、刺激に向かう行動は正の走性、刺激から遠ざかる行動は負の走性と呼ばれる。

走性には走光性、走湿性、走風性、走流性などがある。夜中に街灯に集まる虫には正の走光性があり、明るい光を嫌い、光の輝度の低い方へ移動するウジなどは負の走光性がある。

動性

ワラジムシは乾燥した場所よりも湿った場所を好むが、これは空気が乾燥していると脱水によって死んでしまうからである。よって、乾燥している場所では運動性が高く、湿った場所では運動性が低くなるいう特性をもっている。乾燥している場所では運動が活発化するが、湿度の高い場所を知る手段を持たないためランダムに動きまわる。このような、方向性を持たない運動は動性と呼ばれ、走性とは区別される。


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