パターン認知

図と地の分化

対象の形を知覚するためには、対象を背景から分離し、まとまりとして取り出す必要がある。これを図と地の分化と呼ぶ。まとまりのある形として見える部分を図と呼び、その図の背景となっている部分を地と呼ぶ。図と地の分化が生じたとき、次のような特徴を持つ。

また、見ている対象に複数の図があれば、それらがまとまりをもって知覚されることがある。このまとまりを知覚的群化、または群化と呼ぶ。図のまとまり方には、以下のような法則性があり、ゲシュタルトの法則とも呼ばれる。


概念駆動型処理とデータ駆動型処理

人間の視覚的なパターン認知には、概念駆動型処理とデータ駆動型処理がある。概念駆動型処理とは過去の経験や知識などに基づいて、高次なレベルから情報が処理されるパターン認知で、トップダウン処理とも呼ばれる。例えば、紙に書いてある文章の一部が薄れて、一文字ずつだとその文字を特定するのが困難な場合でも、人は前後の文脈からその文字を推測することができる場合などである。

データ駆動型処理とは、低次レベルでの感覚入力データに基づいた処理が行われ、その後、より高次なレベルへ情報処理が進むパターン認知で、ボトムアップ処理とも呼ばれる。これは、経験や知識などに依存しないもので、例としては幾何学的錯視などが挙げられる。

鋳型照合モデルと特徴分析モデル

視覚パターンの認知の代表的なモデルとして、鋳型照合モデルと特徴分析モデルがある。鋳型照合モデルとは、あらかじめいくつもの鋳型を持っており、その鋳型と入力情報とが照合されるという考え方である。このモデルは、視覚情報が同じ形でも、大きさや傾きが鋳型とずれている場合のパターンを考えると、膨大な量の鋳型が必要になる。いくら人間の脳が優れていると言っても、無限に近いパターンの鋳型が用意されているとは考え難い。

一方の特徴分析モデルは、視覚情報をいくつかの特徴によって構成されたものとしてとらえて認知しようとするものである。入力された情報は、いくつかの特徴に分けて分析が行われ、その後、各特徴が統合される認知パターンである。その中で、文字のパターン認知の仕組みとして、パンデモニアムモデルが提唱されている。このモデルでは、以下のような4種類のデーモンの分業システムが仮定されている。

パンデモニアムモデルでは、入力された文字が多少変形していても、正しく認知できる。しかし、これらのボトムアップ処理だけでは正しく認識できないパターンもあり、人間のパターン認知では、文脈に依存したトップダウン処理も行われている。


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