宣言的知識の構造
意味ネットワークモデル
個々の概念に対応するノードと、それらを連結するリンクによって階層的なネットワークを構成する、意味記憶における概念のモデルを意味ネットワークモデルと呼ぶ。ノードで表現される個々の概念には、上位概念と下位概念があり、それらを結ぶリンクには方向性がある。上位概念の特性でもある下位概念の特性は、上位概念を定義するノードだけに貯蔵され、リンクを介して下位概念に継承される。この特性の継承は、少ない認知的負担でできるだけ多くの情報を貯蔵する認知的経済性を実現している。
意味ネットワークモデルを提案したコリンズとキリアンは、実験参加者に文の意味が正しいかを問う実験を行い、判断のためにたどるリンクの数が多くなるほど、実験参加者の反応時間が長くなることを見出し、このモデルの妥当性を示した。
コリンズとキリアンの実験後、多くの追試が行われたが、意味ネットワークモデルと一致しない実験結果も報告されている。実験参加者の反応時間は、判断のためにたどるリンクの数だけではなく、実験参加者に提示した文の典型性と、上位概念であるカテゴリー名に対する連想頻度が大きく関係していることがわかっている。つまり、ノード同士の意味的距離(意味的関連性)が反応時間に影響していると考えられている。
活性化拡散モデル
意味的関連性の効果は意味ネットワークモデルでは説明ができないため、リンクの意味的距離の概念を付け加えた、活性化拡散モデルが提案された。活性化するとは、特定の記憶表象がただちに利用可能な状態に変換されたことを意味しており、ある概念を処理すると、そのノードからでているリンクの意味的関連度に応じて、近接した概念も活性化されるとするのが、活性化拡散モデルである。活性化の減衰は時間経過に比例し、リンク強度に反比例する。また、複数のノードからの活性化は加算される。
この活性化の拡散は、間接プライミング効果によっても、その妥当性が示されている。
- 『認知心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2010)
- 『認知心理学 (放送大学教材)』 放送大学教育振興会(2013)
- 『錯覚の科学 (文春文庫)』 文藝春秋(2014)