ウェイソン選択課題
4枚のカードの表裏に書かれた事柄が、用意された規則に従っているかを確認するために、どのカードを裏返せばよいかを考えさせる課題をウェイソン選択課題と呼ぶ。ウェイソン選択課題を用いた実験によって、様々な法則性が明らかとなった。
確証バイアス
人は自分が生成した仮説や信念に反する証拠を探そうとはせず、指示する証拠だけを探す傾向が強い。これを確証バイアスと呼ぶ。
→確証バイアス | 社会心理学マッチングバイアス
「AならばBではない」という否定形を含む規則の場合、確証バイアスに従うと、Aと否定形のBが選択されやすいはずである。しかし実験の結果、選択されやすかったのは、Aと肯定形のBであった。これは、条件文の項目と対応する事例を選択する傾向が強いと解釈され、マッチングバイアスと呼ばれている。
マッチングバイアスを発見したエヴァンズらは、人間の推論が、直感的なヒューリスティック過程と、意識的な分析過程の2つからなるモデルを提案しており、マッチングバイアスは、ヒューリスティック過程で生じていると主張している。
主題内容効果
ウェイソン選択課題を、より具体的で現実的なものに置き換えて実験を行うと、正答率が大きく変化することがわかった。これを主題内容効果と呼ぶ。
記憶手がかり説
ウェイソン選択課題を、具体的な内容で行ったが、正答率が変化しない事例があった。ある人には現実的な内容であったが、実験参加者には馴染みのない内容であったためである。この実験結果から、課題内容が具体的かどうかではなく、経験による知識が重要であると考えられ、記憶手がかり説が提案された。
実験に使用された条件文には2種類あり、論理的必然性のない数字や文字などで構成された課題や、人の振る舞いなどについて記述された直接法条件文と、社会規範や道徳的なルールなどを記述した義務論条件文がある。主題内容効果を生じさせている条件文は、すべて義務論条件文であると考えられている。
実用的推論スキーマ
主題内容効果を説明する概念として、抽象的な規則と、経験による具体的知識の中間に位置する、実用的推論スキーマが提案された。実用的推論スキーマは、日常経験から学習された原因と結果に関する思考様式で、「行為Aが許されるためには、前提条件Bが満たされなければならない」という許可スキーマと呼ばれる形をとる。
社会契約説
実用的推論スキーマに対抗する考えとして社会契約説がある。義務論条件文のウェイソン選択課題で成績が良いのは、裏切り者を検知する生得的な心の仕組みに基づいているとしている。つまり、「利益を得ているならば、その対価を支払わなければならない」という社会的交換の規則が、人間の認知メカニズムに組み込まれているためであるとしている。
- 『認知心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣(2010)
- 『認知心理学 (放送大学教材)』 放送大学教育振興会(2013)
- 『錯覚の科学 (文春文庫)』 文藝春秋(2014)