ヒューリスティックス

問題解決の際、簡略化されたプロセスを経て結論を得る方法をヒューリスティックスと呼ぶ。ヒューリスティックスは、必ず正しい結論に達するわけではないが、結論に至るまでの時間を短縮することができる。ヒューリスティックスに対して、論理的プロセスを経て問題解決に至る一連の手順はアルゴリズムと呼ばれる。

人の認知資源は限られているため、少ない認知資源で結論に達することができるヒューリスティックスは、日常生活を送る中での判断や意思決定において、頻繁に用いられる。しかし、人によって判断結果に一定の偏りが生じることが多い。


代表性ヒューリスティック

典型例と類似している事項の確率を過大評価しやすいヒューリスティックを、代表性ヒューリスティックと呼ぶ。例えば、コインを数回投げた時、下記AとBでどちらが出やすいかという問題がある。

大抵の人はAと答えるが、実際には個々の事象は独立しているので、AとBの発生確率は同じとなる。(0.55 = 0.03125)

コインに細工がなければ、表と裏がランダムに出ることを経験的に知っているので、上記の場合Aのほうがランダムの典型例と類似していると判断されたのである。

連言錯誤

代表性ヒューリスティックの例として有名なものに、カーネマンとトヴェルスキーが考案したリンダ問題がある。

「リンダは31歳、独身で、非常に聡明で、はっきりものをいう。大学では哲学を専攻し、学生時代は人種差別や社会正義の問題に関心を持ち、反核デモに参加していた。」リンダの今を推測する場合、可能性が高いのはどちらか。

BはAの部分集合なので、AよりBの方が確率が高くなることはないが、多くの人はBと回答する。このような現象を連言錯誤と呼ぶ。

利用可能性ヒューリスティック

想起しやすい事柄を、優先して評価しやすいヒューリスティックを利用可能性ヒューリスティックと呼ぶ。通常は頻度の高い事例が利用されやすいが、最近起きた出来事や、強い情動を引き起こす出来事も想起されやすい。

係留と調整ヒューリスティック

最初に与えられた情報を手がかりに検討を始め、最終的な回答を得る推測を、係留と調整ヒューリスティックと呼ぶ。係留とは、はじめの値を設定することを意味しており、船が係留地点からそれほど遠くまで動けないのと同じように、事後の調整は通常不十分となる。つまり、初期値が異なると最終的な推定値も大きく異なる。


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