外部性

完全競争的な市場がうまく働けば効率的な資源配分が達成されるが、市場メカニズムがうまく働かず、効率的な資源配分に失敗することがある。これは経済学では市場の失敗と呼ばれる。

市場の失敗のひとつのケースとして、公害や騒音を発生させたり、景観を損なうなどの問題が発生し、直接の売り手と買い手以外の人に影響を与える場合が挙げられる。これは外部性の問題と呼ばれる。

一般均衡モデルでは、企業は最大の利潤を追求し、消費者は最大の効用を追求した結果、価格や需給が均衡し、それがパレート効率的であるとしている。これはある財に対して直接売買する以外の人たちへは影響を与えないことが前提となっている。しかし、財の生産や消費によって公害や騒音などが発生し、生産や消費に直接関わっていない人たちの健康に悪影響を及ぼす場合、高い効用が得られる消費に使われるはずのお金がその対策や医療費に使われてしまえば、その消費者の効用は低下する。

※これは市場メカニズムがうまく働かなかったということではなく、一般均衡モデルの性質上の問題であり、この枠組の中では市場メカニズムはうまく働いているように思われる。

一般に、他人に悪影響を及ぼす場合を「負の外部性」あるいは「外部不経済」と呼び、好影響を与える場合を「正の外部性」あるいは「外部経済」と呼ぶ。


私的限界費用と社会的限界費用

企業の限界費用とは、生産量を限界的に1単位増やすのにかかる費用である。これは、企業が私的に負担する費用なので私的限界費用と呼ばれる。一方で、生産量を限界的に1単位増やしたときに他人が被る損失額の増加分は限界損失と呼ばれる。この私的限界費用と限界損失の和が、社会全体で負担する費用である社会的限界費用となる。

負の外部性がある場合の最適生産量

上の図は、需要曲線と私的限界費用(供給曲線)、そして限界損失を上乗せした社会的限界費用である。均衡モデルでは需要曲線と供給曲線の交点Q1が市場均衡となるが、実際には外部性の費用を上乗せした社会的限界費用と需要曲線との交点Q*が最適な生産量となるはずである。すると、Q*から生産量を増やすたびに損失が生まれることになり、市場は効率的な資源配分に失敗することになる。

ピグー税

上記のようなことが起こる理由は、生産者が社会的な損失を自らが支払うべき費用として捉えていないことにある。そこで限界損失に等しい金額を生産者に課税するという方法が考えられ、こうした税金はピグー税と呼ばれる。

ピグー税は生産するたびにかかるため企業の内部コストとして捉えられ、供給曲線は私的限界費用と限界損失(ピグー税)の和である社会的限界費用となる。したがって、需要曲線と社会的限界費用の交点が市場均衡となり、最適な生産量が達成されることになる。

ピグー補助金

最適な生産量が達成されるようにするために、過大な生産量を減らした場合に補助金を出すという方法もある。生産された場合に発生するはずであった限界損失に等しい金額を企業に与える補助金はピグー補助金と呼ばれる。

ピグー税とピグー補助金は、どちらも市場均衡が最適な生産量になり総余剰も同じになるが、その分け方が異なる。ピグー税は損失分を企業が負担することで政府の税収となるが、ピグー補助金は政府の支出によって企業の利潤となる。

正の外部性

上述したように、負の外部性がある場合、市場は効率的な資源配分に失敗するため、ピグー税やピグー補助金によって最適な生産量になるように矯正することが望ましいわけだが、生産や消費に直接関わりのない人たちに良い影響を与える正の外部性がある場合にも、市場は効率的な資源配分に失敗する。

正の外部性がある場合の最適生産量

上の図は、供給曲線と私的限界便益(需要曲線)、そして私的限界便益に外部性の便益を加えた社会的限界便益である。需要曲線と供給曲線の交点Q1が市場均衡となるが、実際には外部性の便益を上乗せした社会的限界便益と供給曲線との交点Q*が最適な生産量となる。つまり、社会的に最適な生産量は私的な市場均衡における生産量よりも大きいため、効率的な資源配分に失敗しているといえる。この場合も外部性を内部化することによって、市場の失敗を矯正することができる。具体的には補助金などが挙げられる。

例えば教育について考えてみると、高い教育を受けたものは生産性の高い労働者となることから、教育から得られる利益というのは大部分が私的なものである。ただし、高い教育を受けることによって、技術開発やその普及を促進し、その企業や地域、国全体の生産性を押し上げることにもつながる。国全体の生産性が上がれば、多くの人に高い賃金をもたらす。したがって、教育の費用を補助することによって、より多くの人が高い教育を受けることができれば、国全体に正の外部性の効果が期待できるのである。実際に公立学校や給付型奨学金などによって補助されている。

コースの定理

外部性の問題の解決には、政府の働きかけ以外にも、当事者間の交渉で解決できるという考え方もある。これを定式化したのがコースの定理と呼ばれるものである。これによると、取引コストが低ければ、当事者同士の交渉によって効率的な資源配分が達成されることと、どちらが法的な権利を持っているかに関わりなく同一の生産量を達成するとされる。ただし、これらが成り立つにはいくつかの条件が必要になるようである。


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