需要と供給の市場均衡

市場とは、財やサービスの売り手と買い手の集まりのことで、その市場の買い手全体で需要(市場需要)が決まり、売り手全体で供給(市場供給)が決まる。この市場需要曲線と市場供給曲線の交点が、需要と供給が一致する市場均衡となる。

需要と供給とは、競争的な市場における売り手と買い手の行動を指している。


完全競争

市場に売り手と買い手が非常に多くいる場合、一人の売り手や買い手によって販売量や価格が決定されることはない。ある売り手が価格を上げて売ろうとすれば、買い手は他の安く買える売り手から買うようになるし、逆に安く売ろうとすれば利益が出なくなるため、どちらにしても事業の存続が困難になる。個々の買い手にしても、購入する量は市場全体で見ればごく僅かであるため、価格に影響を及ぼさない。

このように、市場に多くの売り手と買い手がいて、個々の売り手や買い手が生産量や消費量を変化させても、価格に影響を与えないような状態を完全競争という。ここでは、市場が完全競争的であると仮定する。

部分均衡分析と一般均衡分析

1つの市場に注目し、他の市場での価格や所得などを一定と仮定して行う経済分析は部分均衡分析と呼ばれる。一方で、すべての市場を同時に扱う分析は一般均衡分析と呼ばれる。

市場均衡

需要曲線や供給曲線の引き方は「消費者行動」と「企業行動」の中で見た。価格をP、数量をQとすると、需要曲線D(Demand Curve)と供給曲線S(Supply Curve)は以下のように描ける。なお、それぞれの曲線は簡単化のために直線にしている。

市場均衡点

完全競争的な市場では、需要と供給が均衡する均衡価格P*と均衡取引量Q*が決まる。均衡点は需要曲線と供給曲線の交点である。

下図のように、均衡価格よりも高い価格であるP'場合は、供給が需要を上回る超過供給となる。

超過供給

この場合、売り手は生産量をQ2にすることで利潤を最大化しようとするが、買い手側の消費量はQ1しかない。そのため、買い手のない財があふれてしまうので価格を引き下げていくと、最終的には供給量と需要量が一致する均衡点に落ち着くのである。

逆に均衡価格よりも安くなると、需要が供給を上回る超過需要となる。

超過需要

売り手は利潤を最大化するために生産量をQ3にしようとするが、需要がQ4もあり供給不足なるため、売り手は価格を上げて生産量を増やしていく。そして最終的には供給量と需要量が一致する均衡点に落ち着くことになる。

需要曲線と供給曲線のシフト

需要曲線や供給曲線は、消費者の所得や生産者の賃金、原材料価格の変化などによって左右にシフトして、価格と生産量は新たな均衡点に向かう。この古い均衡と新しい均衡を比較し分析することは比較静学と呼ばれる。

シフトのパターンとしては、需要曲線の左右へのシフトと、供給曲線の左右へのシフトの4つが考えられる。

消費者の所得の上昇などによって需要曲線が右にシフトした場合、需要が供給を上回る超過需要となる。そのため、新たな均衡点では供給量と価格が増加する。逆に、所得の減少によって需要曲線が左にシフトした場合は、供給が需要を上回る超過供給になるため、価格を下げて供給量も減らすことになる。

需要曲線のシフト

一方で、原材料価格の下落などによって供給曲線が右へシフトした場合、供給量は増えるが需要量は変化しないため超過供給になる。そのため、需要量と供給量の差がなくなるまで価格は下落する。逆に、原材料価格の上昇によって供給曲線が左にシフトすると、供給量は減少するが需要量はそのままなので超過需要が発生するため、需要量と供給量の差がなくなるまで、価格は上昇することになる。

供給曲線のシフト

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