長期の費用と供給曲線
「さまざまな費用と供給曲線」のページでは、短期での総費用曲線と供給曲線(限界費用曲線)について見た。ここでは、すべての生産要素の量を調整できる長期の費用曲線と供給曲線について見ていく。
長期の総費用曲線
まずは簡単化のために、資本規模が小と大2つの短期の総費用曲線を比べてみる。
資本が小規模の方は固定費用が少なくてすむが、生産量を増やしていくと急激にコストが増加していく。一方、大規模の方は固定費用は高くなるが、少ないコストで生産量を増やしていくことができる。どちらも一長一短であるが、2つの総費用曲線を重ね合わせると、どちらを選択すべきかは生産量によることがわかる。
ある生産量において、費用は少ないほうが良いわけだから、2つの短期総費用の低い方を選べば合理的である。したがって、図の青い線が、2つの資本規模を選択できる場合の長期の総費用曲線となる。
資本規模が2つではなく自由に選択できるケースを考えれば、より一般化された長期の総費用曲線を導ける。それには、資本規模を連続的に変化させた場合の短期総費用曲線を考えればわかりやすい。
上図のように、それぞれの資本規模での短期の総費用曲線の下側をなぞったものが長期の総費用曲線となる。つまり、長期の総費用曲線は短期の総費用曲線の包絡線となる。
長期の限界費用
上述したように、資本が小規模な方が生産量の増加に対して急激にコストが増加する。これは限界費用が急激に上がるということである。資本規模を徐々に大きくしていくと、総費用曲線の曲がり方は緩やかになる。これは限界費用の上がり方も緩やかになるということである。
長期の総費用曲線は短期の総費用曲線の包絡線となることから、長期の総費用曲線での限界費用と一致するような短期の総費用曲線が存在することになる。ただし、長期の限界費用よりも短期の限界費用のほうが生産量に対して急激に増加する。これは、長期では資本規模の大きさを自由に変えられるので、短期よりも柔軟性が高いということである。
また、基本的には限界費用曲線と供給曲線は等しいので、これらは短期と長期の供給曲線であるともいえる。
長期の平均費用曲線
総費用と同じように長期の平均費用についても、資本規模を連続的に変化させた場合のそれぞれの短期平均費用を考えるとわかりやすい。
総費用と同様に、長期の平均費用曲線は短期の平均費用曲線の包絡線になる。