オペラント条件づけの行動療法への応用

オペラント条件づけは、行動修正の分野で非常に多くの行動に応用されている。それは治療の分野だけではなく、教育機関や組織行動あるいは自分自身の行動修正にまで及ぶ。ここでは行動療法に範囲を限定して、代表的なものだけを紹介する。


トークンエコノミー

ここでのトークンとは代用貨幣のことで、望ましい行動が行われたときにトークンが与えられ、後で物理的なものと交換できるというシステムである。トークンエコノミーは教室や精神病院、刑務所や社会復帰のための更生施設などで用いられてきており、トークンという強化子を得るために行動が改善されるというものである。

多数の精神障害者施設での研究結果によると、トークンエコノミーの実施期間中は驚くほどの行動の改善が見られている。退院後の追跡調査においても、圧倒的ではないもののかなりの期間持続し、再び病院に戻ってくる割合も少なくなっているという結果も報告されている。

しかし、1980年頃からトークンエコノミーを使用する施設は減少しており、グリンはその要因をいくつか挙げている。トークンエコノミーが行動の持続的な変容をもたらすには長い時間が必要になるのに、病院に収容される期間が年々減少していること。トークンエコノミーを成功させるにはよく訓練されたスタッフの強力が必要で、スタッフへの負担が非常に大きくなること。精神病の患者に対する薬物治療が重視されるようになってきたこと、などである。

トークンエコノミーではないが、強化子を用いた方法は学校や会社などでもよく使用される。例えば、小学校のテストなどで良い成績を取ればスタンプやシールなどがもらえたり、望ましい行動を取ったときは先生に褒められたり、会社のなかでも会社に大きく貢献した場合に表彰されるなどのシステムを設けていることもある。

フラッディング

「負の強化」ページの回避反応の消去でも紹介した方法で、恐怖となる刺激を回避できない状態で強制的に与える方法である。系統的脱感作との違いは、フラッディングでは最初から強い恐怖刺激を与えることである。

フラッディングは慎重に正しく行われると、系統的脱感作と同じくらい効果的であるとする研究結果もあるが、そうした場合、強い恐怖体験を伴うフラッディングを正当化する理由はないとする意見もある。系統的脱感作でほとんど改善しない場合の最終手段として用いるべきとされている。

不随意的行動への罰

行動療法家は患者への負担を考えて、罰の使用を避けようとする。これは道徳的にも社会的にももっともな判断であるわけだが、刺激に対して自動的に起こるような不随意的あるいは反射的行動の場合は、本人が自覚していても直すのが難しい。このようなときに弱い罰子が非常に効果的に働くこともある。

ヘラーとストラングは歯ぎしりの頻度を減らすために弱い罰子を用いた実験を行なっている。患者に歯ぎしりを感知する装置を取り付け、歯ぎしりが記録されるたびに患者に取り付けられたイヤホンからノイズが流れるという方法を用いている。これによって患者の歯ぎしりは約3割まで減少した。残りの3割は装置が感知しないほど弱いものであったという。

タイムアウト法

負の罰を行動療法へ用いる場合の一般的な方法としてタイムアウト法がある。望ましくない行動が行われたときに、好ましい刺激が除去されるものである。

タイムアウト法は望ましくない行動を消去すると同時に、代替行動を強化していくことでより効果を発揮する。望ましい行動が消去されるとそこには空白ができてしまうため、その人にとっては少なからずストレスとなる場合が多い。すると、別の新しい行動をとろうとするわけだが、その行動が望ましい行動であるとは限らないので、あらかじめ代替行動を準備して強化していくことで、効果的に行動を変容させることができる。

刺激の飽和化

望ましくない行動を維持している強化子を取り除くことが難しい場合もある。そのような場合に大量の強化子を与えることで、強化子の効果を弱める方法が刺激の飽和化である。

例えば、何らかの収集癖がある患者にその収集物を毎日たくさん与え続けると、最初は楽しんだりするが、やがてそれらが部屋を占拠し始めると自ら収集物を取り除き始めるようになる。


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