環境が子どもに与える影響

観察学習が子どものパーソナリティの発達にどのように影響するのかという研究は数多く行われている。ここではその中のいくつかを掲載する。


達成動機

バンデューラとクーパースの実験では、大人のモデルがボーリングをしてそのスコアがある一定以上の場合に、器に入ったキャンディーを自分で取り報酬を受けるところを子供に見せた。その後、子どもにもボーリングをしてもらうと、モデルとなった大人と同じ基準でキャンディーを取る傾向があり、モデルを観察しなかった群では、スコアに関係なく自由にキャンディーを取る傾向があった。子どもはこの実験の間、いつでもキャンディーを取ることができたにもかかわらず、モデルを観察することによって自分自身で規律を形成し、それを達成しようとしていることがわかる。

別の研究では、両親が子どもに対し高い期待を抱いていると、子どもは高い達成動機を持つ傾向があることが示されている。この両親たちは、子どもがうまくできたときにはより多くの賞賛を示し、うまくできなかったときにはより失意を表していた。つまり、より多くの強化と罰によって、子どものパフォーマンスの基準が高くなっていたのである。

バンデューラとウォルターズは多くの研究結果から、自己規律や高い達成動機を形成する場合には、直接的な強化と観察学習の2つの要因が共に作用すると主張している。

攻撃行動

攻撃行動を非常に厳しく罰した親の子どもほど強い攻撃行動を示すことは、多くの研究から得られている。また、厳しく罰することは子どもの非行と相関があることも見出されている。

バンデューラとウォルターズは、両親に攻撃行動を厳しく罰せられた子どもは、両親がいるところでは攻撃行動をしないが、両親がいないところでは攻撃的になることを示している。両親がモデルとなり、子どもは両親と同じ方法で人間関係を形成しようとすると指摘している。

テレビと攻撃行動

暴力的なテレビ番組と攻撃行動については長い間多くの議論が行われている。研究では、暴力的な番組の視聴と攻撃性については相関がみられることが多いが、これは暴力的な番組が攻撃性を高めることを示しているわけではない。攻撃的な人が暴力的な番組を好んで見ている可能性や、別の変数を媒介している可能性も否定できない。

しかし、エロン、ハウマン、レフコウィッツ、ワルダーの研究では、200人以上の男子を対象に、小学校3年生のときとその10年後の暴力的なテレビ番組を好む傾向と攻撃性について調べた結果、3年生の時点での暴力的な番組を好む傾向と10年後の攻撃性の間にはある程度の相関があったが、3年生の時点での攻撃性と10年後の暴力的な番組を好む傾向には相関が認められなかった。つまり、暴力的な番組を見ることで攻撃性が高まることはあっても、その逆はないことが示されたのである。

テレビと攻撃行動に関する研究の多くは、模倣行動としての攻撃性に焦点が当てられていたが、観察学習という視点でそれまでの研究を分析したのがホグベンである。ホグベンは暴力が正当化されるようなストーリーの番組の視聴が、攻撃性とより強い相関があることを示した。また、暴力によって不幸な結末になる番組では攻撃性との相関が弱かったことから、単純に暴力行動が映っているかどうかではなく、暴力行動がどのように描写されるか、暴力の結果どのようなことが起こるのかが重要であると結論している。

恐怖症

同じ家族のメンバーが同じものに恐怖を感じていることが多いことは、多くの研究から示されている。それらが代理的に獲得されていることを示す研究もまた多い。親が恐怖を感じている様子を観察した子どもが、同じ対象に恐怖を感じるように学習していると考えられている。

恐怖症の代理的な獲得に関しては、サルなどの動物を用いた研究において、恐怖症がかなり急速に発達し長期的に持続することも示されている。


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