オペラント条件づけの生物学的制約

自動反応形成

ブラウンとジェンキンスはハトのキーつつき反応を、簡単かつ短時間に訓練する自動反応形成という方法を論文として発表した。

自動反応形成は、実験歴のないハトに穀物給餌器から食べることを教えた後、不規則な間隔で反応キーが白色光で照射され、その後反応キーの光が消えて食物が呈示されるという方法である。このときハトはキーをつつく必要がないにも関わらず、すべてのハトが照射されている反応キーをつつくようになるため、逐次的接近法よりも簡単にキーつつき反応を形成できるというものであった。

しかし、自動反応形成はキーつつき反応を簡単に形成できることよりも、もっと重要な意味に心理学者たちは気がついた。キーつつきは典型的なオペラント反応であると考えられていたが、この実験ではキーつつきは強化されていないにも関わらず、ハトはキーをつつくようになったのである。


古典的条件づけとしての自動反応形成

上記のハトの自動反応形成は、現在では古典的条件づけであると考えられている。ハトは穀物を食べるとき頭部を前に伸ばしてつついて食べる。これはハトにとっては穀物刺激に対する無条件反応ととらえることができる。反応キーが照射された後に穀物が呈示されることを学習すると、つつき反応は穀物からキーへと移行する。反応キーへの照射と穀物の呈示が無関係である場合には、キーへのつつき反応はほとんど生じないか、減少あるいは消失することがわかっている。これは古典的条件づけにおけるCS(条件刺激)とUS(無条件刺激)の関係そのものである。

ジェンキンスとムーアの一連の実験では、キーの照射後に食物を呈示する群と水を呈示する群に分けて観察した。どちらの群のハトもキーつつき反応が生じたが、食物を呈示されたハトは口を大きく開けて力強くキーをつつくのに対し、水を呈示されたハトは口をほとんど閉じた状態でゆっくりキーに近づける動作であった。これはハトが食物を食べる時、あるいは水を飲むときの特徴的な動作である。つまりUSに対する反応がCSへの反応に置き換えられていることを示しており、ジェンキンスとムーアはパブロフの刺激置換の概念の典型的な例であると指摘している。

自動反応形成は他の動物でも観察されており、動物がやがて呈示される強化子の信号を見て目で追い、接触することからサイン・トラッキングとも呼ばれている。

本能的逸脱

スキナーのもとで共同研究をしたブレランド夫妻はその後、動物の訓練者として数千もの動物を訓練してビジネスを成功させたが、その中で起きた動物の問題行動を論文として発表している。

ブタは食欲が旺盛であるため、条件づけを行うには最も扱いやすい動物である。実際に、ブタに大きな木製のコインを貯金箱に入れるようにさせると素早く条件づけられる。しかし数週間から数カ月後、ブタがコインを貯金箱へと運ぶ行動は次第にゆっくりになっていき、それは日が経つにつれ悪化していった。この傾向はどのブタにも表れ、ブタの行動を観察すると、コインを何度も落としてはそれを探したり、鼻で引っかき回したり、再び落としたりという行動を繰り返していた。

ブレランド夫妻はこれらの行動が、ブタが採餌するときの一般的な行動であることに気がつき、それは生得的反応に関連しているように見えたので、本能的逸脱と呼んだ。

ブレランド夫妻は、本能的逸脱の例をブタ以外にもいくつも報告している。アライグマの場合にも、コインを拾い小さな容器に入れる課題を行わせると、コインが1枚の場合には問題なく課題をこなしたが、2枚のコインを同時に受け取るようになると2枚コインをこすり合わせる行動を何分間も行うようになった。さらに、一度容器に入れたコインを再び持ち出す行動も目立つようになった。

これらの行動はブタと同様に、アライグマが食物を食べる前に水に繰り返しつける動作や、甲殻類の殻を剥ぐ動作に似ている。つまり、強化された行動から逸脱し、自然環境でその動物が強化子を得るときの本能的行動が生じるのである。


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