強化スケジュール

スキナーの業績の中に強化スケジュールの分類と実験的分析がある。強化スケジュールとはどのような頻度で強化子を与えるのかを示すもので、反応するたびに強化子が与えられるものは連続強化、強化子が特定の頻度で与えられるものは部分強化、または間欠強化と呼ばれる。日常生活では、反応したときに毎回ではなく時おり強化子が得られる例は無数に存在している。

スキナーはこれらを理解したうえで、異なった強化スケジュールが行動に対してどのような違いをもたらすのかを研究した。この研究でスキナーは累積記録器という装置を制作し実験に用いている。累積記録器はどの期間にどのような頻度で反応したかがひと目で分かるようにデータを記録するもので、これによって強化スケジュール毎の反応パターンの特徴が視覚的にわかるようになっている。具体的には横軸が時間経過、縦軸が累積反応数となる。

ここでは、4つの基本的な強化スケジュールについて見ていく。


固定比率スケジュール|FR

固定比率スケジュールは「fixed ratio」の頭文字を取って「FRスケジュール」と略されることもある。特定回数の反応ごとに強化子を与えるもので、例えば10回反応したら1回強化子を与えるスケジュールの場合は「FR10」と表記される。FR1の場合は反応するごとに強化子を与えるので連続強化となる。

固定比率スケジュールでの累積反応記録は、階段状の特徴的な反応パターンを示す。強化子を得た後はしばらく反応がない状態が見られ、これは強化後反応休止と呼ばれる。この反応休止期間が階段の水平部分となり、しばらくすると再び反応が始まる(傾斜部)。

この強化後反応休止の期間は、強化子を得るための反応数が多くなるほど長くなる。これはいくつかの実験から、強化子が得られたことによる一時的な欲求の低減や疲労の回復の影響は小さいことが分かっている。以下に掲載する変動比率あるいは変動時隔スケジュールで、この強化後反応休止の期間が極端に短いかほとんど見られないことも証拠のひとつである。強化後反応休止は、どの程度反応すれば強化子が得られるかが分かっている場合に生じやすく、その期間は各スケジュールの比率に依存している。

変動比率スケジュール|VR

変動比率スケジュールは「variable ratio」の頭文字を取って「VRスケジュール」とも呼ばれる。固定比率スケジュールでは特定回数の反応をすると必ず強化子が得られたが、変動比率スケジュールではいくつかの比率のリストの中からランダムに選択し、その平均的な比率が数値として表わされる。例えば、VR10のリストには1、2、3、4、6、8、16、40などの比率が含まれているかも知れない。

変動比率スケジュールの典型的な累積反応記録は、一本の直線に近い傾斜となる。これは反応の頻度が比較的安定していることを示している。固定比率スケジュールと比べると強化後反応休止は極端に短い傾向にある。強化子の呈示比率が高い場合には特に短くなり、比率が低くなるほど長くなる。

変動比率スケジュールの特別なタイプとしてランダム比率スケジュール(random ratio : RRスケジュール)がある。これは一回の反応ごとに強化子が得られるかどうかの判定が行われる。

固定時隔スケジュール|FI

固定時隔スケジュールは、FI(fixed interval)スケジュールとも呼ばれる。一定の時間が経過した後に反応すると強化子が得られるものである。例えば、FI30秒では強化された直後の30秒間はいくら反応しても強化子は与えられず、30秒以上経った後に反応が行われると強化子が与えられる。

固定比率スケジュールと同様に強化後反応休止が見られ、その後徐々に反応が増えていき、強化子が得られる直前になると急激に反応が増える。累積反応記録には扇形のパターンが繰り返され、これがホタテ貝の縁の形に似ているためFIスキャロップと呼ばれる。

変動時隔スケジュール|VI

変動時隔スケジュールは、VI(variable interval)スケジュールとも呼ばれる。強化された後に次の強化子が得られるまでの時間間隔が強化子ごとに変動するものである。例えば、VI30秒では5秒のときもあれば100秒のときもあり、平均すると30秒になる。

変動時隔スケジュールの典型的な累積反応記録では、一本の直線に近い傾斜となる。反応の頻度は安定しており、変動比率スケジュールと比べると反応率はやや低く、反応率が上がっても強化率を上げるのにはあまり役に立たない。

強化スケジュール後の消去

消去が早いか遅いかはスケジュールの値によって随分と異なる。一般的な原則としては、連続強化は間欠強化よりも消去が早いことである。これは部分強化効果と呼ばれており、なぜこのようなことが起こるのかという説明として弁別仮説がある。

連続強化の場合は反応すれば必ず強化子が得られるため、消去スケジュールへ変更されればそれを弁別するのは容易であり、反応しなくなるまでそれほど時間はかからない。間欠強化の場合は反応によって強化子が得られる場合と得られない場合の両方を経験しており、しばらく強化子が得られない状態が続いても、それが消去に転じたことを弁別するのにかなりの時間が必要になるのである。

ヒトでの強化に影響する要因

強化履歴

ヒト以外の動物での実験の多くは、それまでにどんな強化スケジュールも受けていない動物が用いられる。しかし成人のヒトの場合は、日常生活において多様で複雑な強化の履歴をもっている。この強化履歴の違いによってその後の強化に影響を与える要因となっていることは、ヒトやヒト以外の動物での実験で証明されている。

ルール支配行動

スキナーは一般的なオペラント条件づけである随伴性形成行動とは別に、ヒトの場合には言語的記述によるルール支配行動が存在するとしている。道徳的あるいは倫理的なものだけでなく、ヒトは子供の頃に両親や兄弟、教師や友達からさまざまなルールを言語的に学ぶこともある。スキナーはヒトとヒト以外の動物で強化スケジュールのパフォーマンスが違うのは、このルールによるものであるとしている。

実際にいくつもの実験で、強化スケジュール上でのヒトのパフォーマンスが少なくとも部分的にはルール支配行動の考え方を支持する証拠が見つかっている。例えば乳児や年少の子供は、単純な強化スケジュール上では成人のヒトよりはむしろ動物に近い傾向を示す。これは言語的に未成熟であるためと解釈することもできるが、上記の強化履歴の要因を排除することができないので、ルール支配行動と強化履歴とを区別することは難しい。


参考書籍
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